カーリング女子「選手としての私たちを…」 女性アスリートを「可愛い女の子」扱いする私たちの重い罪

 3月21日、平昌五輪カーリング女子日本代表・LS北見の選手たちが、北海道北見市でのパレードと市民報告会に臨んだ。北見市民会館には行列が出来、1700人ぶんの座席は開場とともに埋まったという。注目度の高さが伺える。しかし壇上で、吉田知那美選手が涙ぐみ言葉に詰まる場面があった。

 それぞれの選手がコメントを求められる中、吉田知那美選手は「パフォーマンス以外の部分でも、沢山の報道があることに、正直、戸惑いだったり驚きも感じています」と話した。この場面の動画は、「北海道ニュースUHB」(UHB 北海道文化放送)がYahoo!ニュースに提供しているため誰でも閲覧可能だ。

 吉田知那美選手は涙ぐみ、言葉に詰まりながら次のように話した。

「パフォーマンスが……、カーリング選手としてのパフォーマンスを……皆さんに応援していただけるように、カーリング選手として評価していただけるように、頑張りたいと思いますので、どうぞ皆さんこれからも、カーリング選手としての私たち、そして日本のカーリング界全体を、応援どうぞよろしくお願いいたします」

 “カーリング選手として”と繰り返した吉田知那美選手。平昌五輪開催中から国内外で大いに注目を集めたLS北見の面々だが、「カー娘(カーリング娘)」と呼ばれたり、「もぐもぐタイム(ハーフタイム)」「美女」「にっこにっこにー」「いちご騒動」など、競技以外の側面で取り上げることも非常に多かった。それもそれで、一般観客の興味が強いためであろうが、競技者として大会に臨んでいた彼女たちにとっては複雑な思いがあったのだろう。

 試合中、「そだねー」と言葉を掛け合い、笑顔でプレーするLS北見のメンバーはネット上でも「可愛い」と大評判だったが、試合中の笑顔の秘訣を聞かれて吉田知那美選手は次のように応えている。

「笑っていることで脳が楽しいと錯覚するって話を聞いて、つらい時に私がつらい顔をすると、それが伝染してしまうってこともあるので、なるべく氷の上では、しっかりカーリングを楽しむ顔を心がけるようにしているので」

美女ブームは8年前も
 カーリング“美女”ブームは、2010年バンクーバー五輪のときにも起こっていた。本橋麻里選手をはじめ、代表チームが美人揃いだとしてこぞってマスコミが取り上げ、本橋選手は「マリリン」の愛称で呼ばれた。しかしそのブームが、カーリングの普及やスポーツとしての活性化につながったかというと甚だ疑問が残る。

 今回もまた、LS北見の選手たちを、アスリートとしてでなく「美女」「可愛い女性」として扱う向きは、テレビ、新聞、ネットを問わず強かった。競技とは無関係な要素で大きく取り上げられ、注目を浴びることは、選手やその競技全体にとってプラスではないだろう。もちろんテレビの前で試合中継を見ながらいち視聴者として「可愛い」と感想を抱くぶんには問題はないにしても、大々的にメディアがそれを煽り、社会全体が享受する文化には間違いなく問題がある。

 女性アスリートへ向けられる不躾な視線について、昨年10月にwezzyに掲載した記事の一部をあらためて以下再掲する。吉田知那美選手が言葉に詰まりながらも率直に訴えたことを、私たちは重く受け止めなければならない。

女性アスリートの肢体を性的に鑑賞することを、「男はそういうものだから」で許容する社会のままでいいのか
 最近、Asagei plusが2012年9月に掲載した「体操 田中理恵 「カメラマン」に対抗した仰天措置 「恥骨テーピング」で激写封じしていた」という記事が、ツイッター上で再び話題になっていた。

 この記事では、カメラマンが「ハプニング」が起きることを期待し、股間部分にフォーカスをあてていたが、田中氏は恥骨部分にテーピングをして「エロ激写」を封じていた、とされている。文中に使われている「理恵ちゃん」という言葉も、アスリートへのリスペクトが感じられないし、記事全体だけでなく、締めに使われている「何ともコーカン度の高い美女なのである」という悪ふざけの言葉は、明らかに田中氏を性的に侮辱したものになっている。

 また、ここ数日、2chのまとめサイトなどでゴゴ通信の「【動画】いわて国体の表彰式動画が女子は63万も再生されるも男子は7000再生 この差はなに?」という記事も話題になっていた。

 2016年10月に開催されたいわて国体の表彰式動画の再生数が、女子は62万9411再生、男子は7083再生という圧倒的な差がついているという記事だ(再生数は2017年10月23日、16時13分のもの。2017年10月25日16時24分段階では、女子702971再生、男子11867再生)。ゴゴ通信の記事には再生数に差がついた原因は、直接的には書かれていない。しかし、動画のコメントや、この記事を引用した2chのまとめサイト、ツイッターなどには、女子の選手が着ているユニフォームの露出や、太もも、胸、腹まわり、そして選手の容姿を比べた感想が無数に溢れていた。女子と男子で動画の再生数が異なるのも、それらを理由とする意見がほぼすべてだった。

 芸能界での性的暴行が「枕営業」の問題にすり替えられるのも、痴漢被害の問題よりも痴漢冤罪が注目されてしまうのも、この二つのケースからうかがい知れる「女性は、ただ存在しているだけで、性的に消費される」ことが関係しているのではないだろうか。

 芸能界での性暴力も痴漢も、具体性を伴った暴力であり、それだけで断罪されるべきものである。それにもかかわらず、そうした被害を無効化したり、笑い話にしたり、軽視する背景には、この社会では、女性を性的に消費することが躊躇なく許されているからなのかもしれない。

 もちろん他者を性的にみることや欲望を覚えること自体を否定することはできない。女子と男子の表彰式動画の再生数の差は、意図して作り出されたものでもないだろう。だが、田中氏は、体操競技のユニフォームを着て、オリンピックという大舞台で、自分のパフォーマンスを行っていただけだし、表彰式動画の女子・男子は、陸上競技のユニフォームを着て、表彰式に参加していただけに過ぎない。ただそれだけだ。性的に誘惑する意図を持たないシーンなのに、「エロい」と言われて注目を浴びてしまう。そこに注目することに、まったく悪びれない社会が出来上がってしまっている。

 こうした事実は、「そういうものだから仕方ないじゃないか」と簡単に開き直って、済ませていいものではない。「枕営業」に注目したり、「痴漢冤罪」ばかりを取りあげる人びとも、女性が社会の中で性的に消費される存在とされているということ自体はおそらく認識している。いや、女性を性的に消費していること自体は認識している、のほうが正しいのかもしれない。だからこそ「枕営業」など、性的な魅力を武器にする女性の話を取りあげるのだろう。

 「女性側も性的消費を望んでいるのだから良い」としたり、一方で「女性側が無防備だから興奮する」としてみたり、消費態度は一様ではない。いずれにせよ、男性が女性に性的な欲望を向けることは自然であり、何ら問題ないとの解釈が前提にある。その態度が、性暴力の問題を軽視し、セカンドレイプなど、様々な形で新たな暴力として現れることに繋がることなど思いもしないのだ。

 再生数のひとつひとつは、個人的な欲望でしかないのかもしれない。でもその集まりが、結果的にどのような形で現れているのか、社会のあり方が映し出されていのかを一度立ち止まって考えてみるのはどうだろう。性暴力が、加害者と被害者という関係に留まらない、社会全体の問題であることに気が付けるかもしれない。

(wezzy編集部)

最終更新:2018/03/22 20:00

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