「タレント本という名の経典」

「自虐発言」「女嫌い」「男好みのオバちゃん演技」有働由美子アナが出世した3つの理由

2014/11/29 19:00

 男に甘い姿勢は、紅白歌合戦のエピソードからもうかがえる。舞台袖で着替えている最中、谷村新司に着替えを覗かれたそうだが、この時の有働アナは、Tバックだけのほぼ裸だったという。普通ならば、ここで、お得意の過剰な自虐(例:四十代のオバチャンの裸なんてお見せしてすみません)が出そうなものだが、特にこのことに関する記述はなく、「(紅白の仕事で)五歳は老けた」とざっくりした自虐で締めくくる。こんなとき、有働アナの本音がバレる。有働アナはスタイルに自信があるので、裸を見られるのもまんざらではなく(故に紅白の司会時の衣装はいつも露出が激しい)、だからこそ、同性に対して厳しい視線を向けるのだ。

■有働アナは「黒」ではなく……

 女として自信があるのに、なぜキャラを偽装するかといえば、それを欲しがる人がいるからだ。本書のタイトルは、逆読みすると、「クロウドウ」である。若いリポーターが表現の稚拙さを笑顔でごまかしたとき、「若いからってそれでいいのかしら」と斬り、担当プロデューサーが「出たね、黒ウドウ」と言ったのが、タイトルのきっかけだそうだが、中年女性が若い女性に圧をかけるという図式は、男の想像する「典型的オバチャン像」といえるのではなかろうか。女性は自分と同じくくりの女性を意識する。独身女性は既婚女性を意識しないし、中年女性は若い女性をいじめていると思われたくないので、距離を置くもの。男好みの黒を演じる気配りが、有働アナ、出世の3つ目の柱である。

 容姿端麗、人柄も良い、非の打ちどころがない男性にプロポーズされたが、小心者故に断ってしまったなど、本書には「シロい」エピソードも登場する。有働アナのファンにとっては、「遠慮ばっかりしてると幸せになれないぞ!」「そういう謙虚なところが好きです」と励ましたくなるのだろうが、筆者には「実はいい男に選ばれてるんですけど」アピールに感じられた。

 有働アナは、筆者にとってはクロくもシロくもない。それなら、何色かといえば、赤である。紅一点としての立場をふまえて、男の願望を受け入れる。自虐を利用して女の嫉妬からも身を守る。出世したい女性にとって、有働アナは「紅組」のお手本といえるだろう。
(仁科友里)

最終更新:2019/05/17 20:55
『ウドウロク』
ドヤ顔で自虐する女――それが有働由美子
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