[官能小説レビュー]

清算できない過去と手に入れたい未来、板挟みで人は何を思う?

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『初めての…』(堂本烈、二見書房)

■今回の官能小説
『初めての…』堂本烈

 誰しも愛する人ができると、相手の過去や現在までも自分色に染めたくなり、自分自身も相手の色に染まりたくなる。けれど、現実にはそうもいかない。今まで蓄積して来た遍歴を経て今の恋愛をしている自分があり、そんな自分に相応しい相手が存在しているのだ。

 つまりは相手が歩んで来たセックス遍歴も含めて受け入れなければならない……けれど、頭では理解しつつも理性が追いつかないのが人間のエゴというもの。相手が白紙ならば、自らの手でいかようにでも染められる。しかし、真っ白な相手に対して薄汚れた過去を持っているとしたら、どうだろう? 不可能だと知りつつも、必死に己の過去を消しゴムで消そうとするのではないだろうか。

 今回ご紹介する『初めての…』の主人公・恒は、流されるままの人生を歩み、今は法律スレスレのビジネスを営んでいる柴田の元で、刹那的な家業を営んでいた。自らが抱いた女たちを派遣し、複数プレイを望む客を取り“パーティ”を主催したり、産業廃棄物を運んだり……。

 恒に寄ってくる女性は多い。しかもどの女性たちも、恒のビジネスに相応しい「あっけらかんとユルい女」ばかり。そんな恒の一番のビジネスパートナーは、19歳の知里。持ち前の勘の鋭さと豊富な男性経験、豊満な肢体に恵まれ、恒がよく手掛ける“パーティ”のアシスタントとして重宝していた。

 ある夜、“パーティ”では満たされないままで終えてしまった知里を慰めるべく、恒と知里を乗せた車は人気のない林道へと向かった。ちょうど頃合いの駐車スペースに車を停め、2人の体が重なった次の瞬間、妙な影を目撃する。ふたりが身を寄せて震える前に立ちはだかった影は、天体観測のために1人真夜中の森に踏み入ったという女性・乙女だった。

 ひょんなことから乙女が勤務する科学館に脚を運んだ恒。これまで女に不自由したことがなく、自信を持っている恒にとって、天然で男を知らない初心な乙女は厄介な存在だった。鼻筋が高くてストレートの黒髪が知的で近寄りがたい印象を持たせるけれど、鼻にかかった甘い声が妙な親近感を抱かせる。そして、露出度の低い衣服に包まれた豊満な肢体——アンバランスな乙女の魅力に、恒は戸惑いつつも魅了されてしまう。

 これまでの恋愛遍歴では感じなかった恋心。乙女に抱く感情に面食らいながらも、少しずつ距離を縮めて、乙女と一夜を過ごすことに成功する。

「彼氏、できたことないんです」

 緊張しつつ、乙女の最初の男となる恒。星空を見上げ、恐れや怯えなどの久しい感情を抱えながら、彼女の“女”を開花させていく――。

 初めて本気で人を好きになった恒。しかし恒には、切っても切り離せない、知里がいる。彼の過去をつなぐ知里と、未来をつなぐ乙女。2人の女性の狭間で、恒が選んだ最良の道とは……。

 過去は清算できない、けれど今までとは違う未来も見てみたい。背中合わせの感情に折り合いを付けることなんて、多分無理。だったら両方取っちゃえ。という夢みたいな結末は、官能小説の世界の中ではアリだけど、もちろん現実はそう都合良く事は運ばない。現実にはもっとこじれ、もっとあがいて、もがき尽くしてヘトヘトになったころ、ようやく折り合いが付くものではないだろうか? そして、妥協せずにもぎとったカップルのみが幸せな道を歩めるはずだ。
(いしいのりえ)

『初めての…』

過去は過去でしかない、というのも事実

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