[官能小説レビュー]

ありえないセックスが続く、官能”ファンタジー”小説『蜜色の秘書室』

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『蜜色の秘書室』(幻冬舎)

 官能小説を読む楽しさって何だろう? それはたぶん、一冊の本のなかには「何でもアリ」の世界が広がっているからだと思う。二股三股は当たり前、3Pに人妻、近所のお姉さん……。リアルだったら決して体験できないような相手やシチュエーション、はたまた人には言えない性癖や道徳的にNGな関係も、官能小説の世界だったらアリ。

 ただひとつ、絶対に外せないお約束は、「お互いが気持ち良くなる」こと。気持ちも身体も一方通行じゃダメ。お互いが、同じくらい気持ちよくなることが大前提。そんな、ただ愛欲に没頭できるセックス、リアルで経験している人っていったいどのくらいいるだろう?

 人並みくらいの経験をしてきた今、ふと自分のセックスライフを振り返ってみても「同じくらい」と胸を張って言える相手がいたかは、正直疑問。だから「ありえない!」と感じてしまうのかもしれない。今回ご紹介する『蜜色の秘書室』(幻冬舎)は、最初から最後までありえないセックスファンタジーが、これでもか! と、畳み掛けるように描かれている。

 官能小説界で愛されるM女の要素を寄せ集めて形にしたような、美人、マジメ、(ほぼ)生娘な秘書・純奈。彼女は入社8カ月目にして、突然部長室の専属秘書に抜擢される。そこにいるのは、官能小説界におけるS男の最終形態のような、仕事もエロスも現役バリバリの東海林部長。そんなふたりの禁断の秘書室。もともと部長に憧れていた純奈は、いとも簡単に部長に身体を許してしまう。

 ふたりの逢瀬は秘書室を飛び出し、深夜のコピー機でマン拓を取るわ、エレベーターでの早打ち、資料室で声を殺しながらのセックスと、会社をあますところなくエロ目的で使い、純奈のエロス街道を開拓していく。普段、仕事をしている場面は抜粋しているんだろうなと100歩譲っても、このふたり、出社すりゃセックスばっかしてる。しかもほぼすべてオフィス内。とんだ給料ドロボーだ。

 下着を剥ぎ取られて夜の社内をほぼ全裸で歩かされたり、同僚に見つからないようにデスクの下でクリ攻めされたりと、東海林部長のドS調教を受け続けるも「これは愛があっての調教だわ」と脳内変換してしまう平和な純奈。ところが最後に部長がお約束を破り、純奈を”裏切る”行為をしでかしてしまう。

 部長の手のひらで転がされつづけている純奈も、ついにこれで決別かとホッとしたのもつかの間、部署移動を命じられると涙を流して「捨てないで」と懇願する純奈。そしてふたりは性なるハッピーエンドへ。……あ、あ、あ、ありえない……!

 何でもアリの官能小説というジャンルならではのストーリー。常識を語るなんて無粋だし、読者もそんなものは求めていない。だから最初から最後まで、一冊まるごと、美男美女がつま先から頭のてっぺんまで性に溺れるだけの物語、と肯定しようと思ったけど、やっぱりあり得ない! 官能”ファンタジー”小説とカテゴライズした方が納得できる1冊なのかも。

『蜜色の秘書室』

ファンタジーとしてならアリ!

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