[連載]マンガ・日本メイ作劇場第11回

登場人物と設定のどこにも共感ポイントがない、奇跡の『禁断』シリーズ

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『禁断―秘密の花園 完全版』(小
学館)

――西暦を確認したくなるほど時代錯誤なセリフ、常識というハードルを優雅に飛び越えた設定、凡人を置いてきぼりにするトリッキーなストーリー展開。少女マンガ史に燦然と輝く「迷」作を、紐解いていきます。

 女にとって、性のファーストコンタクトというのは、結構な衝撃だ。

 なんでかって、女にとって初体験というのは、「ケツにリンゴ入れる勇気はありますか?」というくらい、恐ろしげな行為なんである。見たことないモンが体に入ってくるんだから、バナナなのかリンゴなのかも分からない、もう想像を絶するホラーである。それを無理やり襲われたら、どんなに大きなトラウマになるか。

 少女マンガには、結構この手のトラウマを題材にしたものがある。『キス&ネバークライ』(小川 彌生、講談社)とか『闇の果てから』(津雲むつみ、集英社)とかの、ダークでシビアな作品だ。そしてこれらのマンガに登場する男子たちは、目頭が熱くなるほど、根気よく主人公のトラウマに付き合ってくれている。読者の方が、「もーいいからやっちゃえよ」と思うほどである。しかし彼女たちの傷は根が深く、性と向き合うようになれるまで、とんでもない長い時間と誠意が必要なのだ。そして、こうしたトラウマは、多かれ少なかれ大抵の女に経験があり、読者の共感を呼ぶ。

 しかしここに、ダークな雰囲気を持ちつつ、全然納得いかない物語がある。それは、刑部真芯の『禁断』(小学館)シリーズ。

 まず主人公格の毬也。真性のロリコンである。自分好みの少女・萌子を施設から引き取ってきて育てるのだが、何のためにと聞かれたら、もちろん性欲処理のためである。萌子が適度に育ったころにガッツリ襲い掛かり、その後はもー猛獣のように萌子にのっかってツユの嵐。

 そんな毬也を、萌子はどう受け止めているかというと、保護者と信じていた人間に襲われて、深い絶望感を抱いている……ことはなく、もーバッチ来いウエルカム状態なのだ。最初こそは「いや」とか言って、拗ねてるけれども、結構早々に本人もノリノリ。事故で記憶を失ってみたり、別れを決意してみたりするたびに、サカって盛り上がってよだれ出しちゃってる。どうなんだろう、保護者だと思ってた男にいきなり襲われたら、相当トラウマになりそうだけどな、普通。ここらへんが、読者を雨の中置いてきぼりにして、奔放にエロに走ったメイ作の風味が満々だ。

 そしてそんな萌子に気があるクラスメートの連太郎。こいつもすごい。体育祭の日、体育倉庫で二人がガタガタセックスしているところに出くわす。目の前にいるのは、ズボンのベルトを締めてる毬也、なんかぼろぼろになってる萌子だ。「今、し終わりました」というようなところを見て、連太郎はどうするのか。

 フツーに考えたら、中学生の男子が人のセックスをのぞき見しちゃったら、「うわっやっべえエロっ!」とか言って逃げて言いふらすか、「え、オレもやっていいんっスか?」といったところじゃないでしょうか。ところが連太郎、毬也に向かってこう叫ぶ。

「保護者という大義名分をふりかざして萌子をがんじがらめにして、犯して所有した気になってるただの変態だ!」

 うわっ、それリアルにホントのことだし。この土壇場で、よくそんな正論が吐けるよ。

 で、体中に毬也のツバが付いた萌子を抱きしめ、「オレのとこに来い」と言う。オレのとこったって、被扶養者だろお前。中学生なんだから。

 とまあ、ロリコン毬也をはじめ、主要人物が何となくみんな尋常ならざる感じのこのマンガ、なにがすごいって、どこを取ってもあんまり共感したり納得したりしないところである。これで強烈に読者の賛同を得て、「すごい分かる、切ないよね~!」とか言わせたら、どんなに変態が主人公であろうが、それは「名作」と呼ばれるんだけど。

 ただ一つ言えることは、このマンガは紛れもなくめちゃくちゃやらしい、ということである。

■メイ作判定
メイ作:名作 9:1

『禁断―秘密の花園 完全版』

まず、「刑部真芯」というの読める?

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