[連載]ヤリチン卒業!! 叶井俊太郎の子育てコラム

“元ヤリチン”とジブリの奇妙な関係……それは緊張の一晩から始まった!

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(C)倉田真由美

 先日、ウォルト・ディズニー・ジャパンから電話がありました。「元ヤリチン」「バツ3」と言われ続けているオレとは対極な優良企業からの電話だったので、思わず襟を正して用件を聞くと、『天空の城ラピュタ』と『ホーホケキョ となりの山田くん』のブルーレイDVDが発売になるので、その発売記念イベントでオレと妻くらたまにゲスト出演してほしい、というじゃないですか! なので、オレも「いやーくらたまはまだしもオレはジブリ作品にとってマイナスイメージになるんじゃないですかね?」と返すと、「ぜひご夫婦で!」とおっしゃるので引き受けさせてもらいました。

 そもそもオレとジブリの出会いですが、2002年頃、『アメリ』が大ヒットしたので、そのイキオイでそれまでのエログロ路線をやめて、女性が好きそうな恋愛系ヨーロッパ映画を多数買い付けた時期があったんですよ。その中の1本にチェコ映画で原題『ダーク・ブルー・ワールド』という第一次世界大戦が舞台の恋愛映画があった。劇中に戦闘機が登場するし、銃撃シーンもかなり派手な戦争映画としても売れそうな作品だったので、オレは勝手に「これは『紅の豚』だ!」と思い、ダメ元でジブリの宮崎駿監督に絶賛コメントをもらおうと決心しました。で、早速ジブリに電話し、映画の説明すると「とりあえず資料送ってください」とのこと。ハッキリ言ってダメ元だったので、オレとしては資料が送れただけで満足。というか、送った時点で終了した気分でした。

 が! その2週間後くらいにジブリから電話があり、「宮崎監督が映画を見たいと言っているので、ぜひジブリで試写をやりたいと思います」と言うじゃないですか! これには驚愕しましたね。指定された日時にフィルムを持ってジブリに行きましたよ。そうしたら宮崎監督、高畑勲監督、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明監督、奥さんで漫画家の安野モヨコさん、『ガメラ』の樋口真嗣監督たちが待機してるじゃないですか! 日本を代表する映画監督たちが集まってチェコ映画を鑑賞するって滅多にないことでしょ! というか、あり得ないですね。さすがジブリです!

 で、上映終了後、宮崎監督たちがホールに集まって、チェコ映画について評論を始めました。「しまった! テレコを持ってくればよかった!」と思うほどの濃密な映画議論が交わされます。ちなみに試写中にオレは文房具店でサイン色紙を買ってきて、皆さんにイラスト付きで絶賛コメントをもらいました。

 ところが、皆さんは口を揃えてこの映画の邦題がよくないと言われました。『ダーク・ブルー・ワールド』の邦題は『この空に君を想う』。チラシやポスター、前売り券はすでに何万枚も印刷済みでした。それでも宮崎監督は「原題の『ダーク・ブルー』でいいじゃない。この映画に変な日本語タイトル付けるのおかしいよ」とおっしゃいます。それでもオレは、「すみません。お言葉はありがたいのですが、すでにポスターなど印刷してまして……」「そんなの破棄しちゃえば? とにかく、タイトルは変更してよ」。オレは「うーん」とマジで悩んでると、鈴木プロデューサーが「じゃあ、みんなでファミレスでも行くか!」というわけで、車で近くのファミレスへ。そこでもタイトル変更の話がメイン。オレは皆さんに説得されまくり、その場では「分かりました! なんとか会社を説得してみます!」と言ってタクシーで帰宅しました。時間は深夜3時過ぎ。タクシーの中、とりあえず映画のポスターのデザイナーに電話で相談することに。

 「ジブリの宮崎監督がタイトル変えろと言うんだけど、どう?」。すると「何言ってんの? 世界の宮崎監督が言うなら速攻変えなよ! 当たり前じゃん!」「そっかーそうだよな、明日会社で説得してみるわ!」というわけで翌日、社長以下オレの上司の皆さん集まってもらい、ジブリの顛末を説明。すると社長が、「ジブリの宮崎監督が変えろというのであれば、今すぐ変えなさい! 何やってんだ、お前は! 今までのポスターは全て回収して破棄」というわけで、タイトル変更は決定した。つーか、なんで怒られてんの、オレ! って感じですよ! 一晩悩んで損したわ!

 そんなわけでジブリの鈴木プロデューサーに電話してタイトルが変更になったことを伝えると、「マジで変えたの? すごいな! とりあえずジブリに来て、宮崎監督に報告しなさいよ」と言われ、オレはその日の内にジブリに行きましたよ。宮崎監督に報告したら「え? 本気で変更しちゃったの? あらら~」。「あらら~」って、頼みますよ! その後、鈴木プロデューサーから「実はジブリとしてはこの映画に出資しようと思う」と言われ、意味がわからず思考停止状態になっていると、鈴木さんはさらに「一緒に日テレと博報堂も出資します」と続けた。混乱したオレは「えーと、ジブリと日テレと博報堂が、この作品にお金出すということですか?」「そう。ジブリとしても洋画の配給に興味があるので、いい機会だと思ってね。あ、あと追加でローソンも協力として参加してもらいます!」とのこと。まさかジブリと一緒に仕事ができるとは思ってもなかった!

 結果的にこの『ダーク・ブルー』は興行的には大ヒットまでいかなかったけど、トントンの収支にはなった。その後、高畑監督が気に入ってたフランスのアニメ『キリクと魔女』も買い付け、この作品にもジブリと日テレ、博報堂も同じく出資し、全国公開を展開した。これもまあまあの成績だったんじゃないかな。いくらジブリがオススメの洋画でも、社会現象になるようなヒットにならなかったってことが分かりました。けど、ミニシアターの作品にジブリが参加したってことは、いままでなかったことだし、映画界的に伝説になったと思いますよ。鈴木プロデューサーと一緒に仕事ができ、広告展開とかポスターデザインの方向性など勉強させてもらいました。それからも鈴木さんのラジオ番組にゲストとして呼んで頂いたり、お付き合いして頂いてる。ありがたい限りですよ! 今後ともよろしくお願いします!

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