外見オンチ応援カウンセラーの「脱・恋愛オンチ」 第7回

リアリティなき「整形美人」山田優、舞台挨拶に80人の悲哀

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数百万円で人生は買える……のか?

――美人でない人=外見オンチが、「美の格差社会」の中で、自分らしく生き抜くためにはどうすればいいのか? そこいらの美人だけが取り柄のエッセイストには書けない建前抜きの恋愛論。

 劇場版『カンナさん大成功です!』が1月17日に公開された。キャッチは「整形美人で何が悪い!?」「整形美人ですが、何か?」。原作は、鈴木由美子の漫画『カンナさん大成功です!』(講談社)。累計発売部数350万部だという。

 学校でも職場でもいじめ抜かれ、差別を受けてきた天然ブスのカンナが生まれ変わるため、優しくしてくれたかっこいい彼に振り向いてもらうため一大決心をし、「ぜーんぶ なおしたのーっっ」「何百万円もかかっちゃったけどーっ」と全身美容整形を選ぶというストーリーだ。
 
 美容整形大国の韓国で先に映画化されている。韓国でのタイトルは『美女はつらいよ』


 「私が愛されないのは、太っているから。きれいじゃないから」と、ブスでデブな女性が、美容整形で過去と脂肪を捨て、人工美人になったらどうなるかを描いている。この韓国版、同国では660万人を動員し、2006年の興行収入第1位となった。2007年暮れ、日本でも公開されている。

 日本版『カンナさん大成功です!』でカンナ役を演じたのは、山田優だ。

 この映画の公開を知った07年末、共演に南海キャンディーズのしずちゃんの名前を見つけたので、整形前のブス役をしずちゃんが演じるのかと思ったが、それは違っていて、天然ブスだったカンナと似ている友人の勘違いブス役だった。「外見オンチ」役はお笑い芸人が定番である。

 クランクアップ後、山田優が「整形美人になって自分に自信がつき、幸せになるのであれば、整形してもいいのかなあと『カンナさん』を演じて感じました」とインタビューで語っていた。しずちゃんが同じことを言ったら、まったく受け取り方が違ってくる。

 記者会見のとき、「整形したい箇所は?」と聞かれ、山田優は「もっと目を大きくして鼻も高くしたい」。しずちゃんは「ヒザの皮が堅くてサイの肌のようになっているので直したい」と答え、笑いを誘っていた。

 劇場公開初日、東京・渋谷東急に舞台挨拶を見に出かけた。主演の山田優、しずちゃん、中別府葵、浅野ゆう子が登壇した。指定席を予約して出かけたものの、観客は80人くらい。なんとも寂しい舞台挨拶だった。

 まわりの女性たちは、山田優を「カエル顔の子」と言っていて、女性陣の顔評価はそんなに高くなかった。だが、生の山田優の立ち姿を見て、スタイルのよさはさすが。やっぱり美人だ。

 山田優は「コンプレックスをちょっと克服できるというか、背中を押してもらえるような元気な映画になったと思います。みなさんも、人生を前向きに、明るく前に進んでもらいたいなと思います」とコメント。しずちゃんが「ブスの気持ちがよくわからなかった。役作りがむずかしかったですね」とコメントすると、客席からは笑いが起こった。

 入りが悪いのは宣伝が弱いからかと思ったものの、見終えて、これでは評判にならないだろうなと思った。

 日本版の構成は、整形前はアニメーションで、手術後から実写に切り替わる。天然ブス時代の顔すら出てこない。韓国版の主演のキム・アジュンは、実際は身長170センチ、体重48キロのスレンダー美人だが、それを、ハリウッドの特殊メークで身体をはって「ブス&デブ」女のカンナを演じきった。

 「楽しいけど切ない」韓国版に対し、日本版は「バラエティ感覚」。コミカルな漫画の実写版だった。

 韓国版のほうがリアリティを感じたのは、脚本、脚色、演出のすばらしさ、かつ演技陣の魅力である。『カンナさん大成功です!』ヒット後、韓国では美容整形をする女性が増えたという。これも表現力の強さの結果だろう。といっても、美容整形を進めている映画でもない。

 脚本、脚色、演出とすべてが「薄い」中、山田優もそれなりにがんばっているが、整形前、手術時、整形後の感情、恋愛での男女の葛藤、心の成長などもショーットカットで描き切れていない。韓国版には美容整形をカムアウト後のテーマが見え隠れしたが、日本版はそれもなかった。

 原作と同じく、顔と身体を変えれば「脱・恋愛オンチ」。めでたし、めでたしだ。見終えて、恋愛も仕事も「ブスでは、勝ち組になれないといいたいのかしら」と思った。といっても、その全身整形美人になるのに、471万1,960円のお金が必要だ。

 先週バラエティ番組で、香里奈顔にするのに「一番高額な芸人は?」企画をやっていた。1位はハリセンボンのはるかで、全部とっかえて整形箇所12カ所、429万円。2位は椿鬼奴で8カ所、397万円。3位が大島美幸で13カ所、362万円。

 彼女たちも全部とっかえたら、「脱・恋愛オンチ」になれるのか?

 美人になると、俳優の小栗旬とうまくいっているとか、いないとかの噂が続く山田優のような恋愛生活を送れるのか?

 わたしの前の客席に、赤い帽子をかぶったファッショナブルな女性が座っていた。山田優のお母さんだった。美人のお母さんはまた美人だった。美人は再生産されていく、という事実のほうが、映画よりも興味深かった。
(山中登志子)

コミックス『カンナさん大成功です! 』(1)

男性陣にもぜひ読んでもらいたい。

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山中登志子(やまなか・としこ)
1966年生まれ。編集家。占いスペース「桜」(新宿西口)、「通販あれこれ」経営。お茶の水女子大学卒業後、リクルート「就職ジャーナル」、「週刊金曜日」編集部に在籍。200万部ベストセラー『買ってはいけない』の企画・編集・執筆者。『外見オンチ闘病記』(かもがわ出版)出版後、外見オンチ応援カウンセラーとして活動開始。最新の共著に、スピリチュアルカウンセラーの”ホンモノ度”を格付けした『第2の江原を探 せ!』(扶桑社)がある。(※占いスペース「桜」でご予約の際、「サイゾーウーマンを見た」と言っていただいた方は、どの先生の鑑定も10%OFFになります)

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