私は元闇金おばさん

大女優の息子がグラビアアイドルを借金のカタに! 闇金事務員が見た地獄の“入り口”

2023/07/15 16:00
るり子(ライター)
横断歩道で立ち止まっている女性の後ろ姿の画像
写真ACより

 こんにちは、元闇金事務員、自称「元闇金おばさん」のるり子です。

 貸金業者を利用するお客さんのほとんどは、法人個人の関係なく、公庫や銀行から融資を受けられない人ばかりです。また、金融業者をはじめ、不動産業、風俗業、飲食業、芸能事務所など、公的な金融機関では信用取引が難しいとされる業種もあって、そうした方々も私たちのような街金融を利用されていました。

 融資依頼の申込書を基に、代表者の信用情報を問い合わせれば、サラ金や大手商工ローン会社を複数利用する多重債務者ばかり。いくら審査が甘い街金融であっても、信用取引などできる状況にありません。特に、私の勤めていた会社は、都知事登録業者ながらも法定金利以上の金利を徴収していたので、まっさらな客が来ることは滅多にありませんでした。

 その一方、連帯保証人として名前が挙がってしまう方の信用情報は真逆で、直近に複数回の信用照会があっても、利用履歴や貸付残高がない方が多かったと記憶しています。短期間に複数回の信用照会を受けている事実は、この連帯保証人での借り入れを複数社同時に申し込んでいる事実を示します。

「この保証人をつけたら、いくら借りられるのか」

 資金繰りに窮した多重債務者が、連帯保証人候補の名前と生年月日が書かれたメモを片手に、複数の会社に打診しているわけです。そのような人の信用情報に接するたび、人生崩壊の入口を見た気になりましたが、取引を断るわけにもいきません。いずれ、私たちに大きな利益をもたらしてくれるのは、こうした連帯保証人の有する資産なのです。今回は、有名女優の長男を名乗る芸能プロダクションの社長が、複数の連帯保証人を残して行方をくらました時のことについて、お話ししたいと思います。

「母は大女優」芸能プロダクション経営者が「300万円」を借りに来た

「この田中社長、とある大女優の息子さんなんだ。ほら、あの夫婦で温泉につかるCMに出ていた昭和を代表する有名な女優さん。社長も、わかるでしょ? いまは、ゴルフ場開発と芸能プロダクションを経営されていてね。運転資金として300万ほど用立ててもらいたいんですよ」

 入社から1年ほど経過した頃、金田社長お抱えのブローカー(顧客の資金繰りを手伝って手数料を取る人たちのこと、紹介屋)である佐々木さんが、50歳くらいに見えるスタイルの良いお客さんを連れてきました。もう70歳近いだろう佐々木さんは、体が大きく脂気の強いガマガエルのようなタイプの人で、社長と長年の付き合いがあることを楯に偉そうに振る舞うことから、私はもちろん従業員のみんなからも嫌われています。

 特に、伊東部長の持つ佐々木さんに対する拒絶反応は強く、あいさつも返さない間柄になっていました。それを知っている社長は、イケメン営業マンである佐藤さんを脇侍において対応されます。

「田中と申します。こちらが、ご指示された申込書と決算書、それに自宅の不動産謄本です」

 資料を受け取り、早速に信用情報を照会された佐藤さんが、排出されたレシートを手に言いました。

「やっぱり目一杯つまんでいるよ。ブロ―カー使って、自分から資料持ってくるヤツに、信用で貸せるわけがないよな」

 ブツブツ言いながらも、さわやかな笑顔で応接室に戻った佐藤さんが、田中社長の信用情報が記載されたレシートを手に商談を進めます。佐藤さんが席を外している間、少し前に亡くなられた大女優の実子だと社長に告白した田中社長は、とある女性タレントと交際している時、写真週刊誌に撮られたことがあるのだと自慢気に話していました。

典型的な道を踏み外した大女優のドラ息子
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