私は元闇金おばさん

「闇金王国」はどのように最期を迎えたか? 金に執着した社長の情けない姿

2023/03/04 16:00
るり子(ライター)
写真ACより

 こんにちは、元闇金事務員、自称「元闇金おばさん」のるり子です。今回は前回に引き続き、かつて私が働いていたの“闇金”の終焉についてお話していきたいと思います。

 警察の強制捜査の翌日、事務所に到着すると鍵が開いていたので恐る恐る中を覗くと、社長の奥さんが事務所内で待ち受けていました。お目にかかるのは、2年前の社員旅行以来で、あまり話したこともないため緊張します。

「おはようございます。今回は、ご迷惑をおかけして、ごめんなさいね」
「いえ、私は大丈夫です。奥様は、大丈夫ですか?」
「しっかりしないといけないときだから、なんとかね」

 奥様も眠れなかったのでしょう。憔悴しながらも、悟られぬよう気丈に振る舞う姿は痛々しく、どこか寂し気に見えました。昨日は、社長の自宅にも家宅捜索が入り、それが夕方遅くまでかかってしまったために、これから留置される警察署まで差し入れに行くそうです。しばらくは接見禁止が続く見込みですが、弁護士と一緒に行くため、なにかあれば聞いてもらえるとのことでした。

「お客さんからいただく金利の計算は、どうしましょうか? 法定金利内に収めないと、また事件にされちゃうかもしれませんよ」
「そうね。問題にならないように正しくやってください」
「不渡が出たらどうします? 私たちにできることは、なにもないんですけど」
「そこは聞いてくるわね。いろいろとご心労かけて、本当にごめんなさい」

 その結果、できないことは放置しておいて構わないと指示されましたが、まるで想定外のことが起こります。

社員の横領が発覚。顧客が次々と手のひら返し――疲弊したるり子を助けたのは?

 事件を起こした社員2人が担当する顧客の期日が到来し、再貸付の依頼をいただくと、月に3割もの利息を支払わせていたことが露見したのです。正規の貸付(といっても違法な金利ですが)であれば、100万円をひと月間借りた時の金利は6分で、金額でいうと6万円程度の話になります。

 ところが2人は、その5倍――月に30万もの金利を取っていました。つまりは一回の貸付で、1件あたり24万円も着服していたことになり、その悪質さは極まりないものといえるでしょう。2人の管理する債権は、合計で2000万円ほど。すべての顧客に設定金利を確認して回ると、ほとんどの客から月3割の利息を徴収しており、さらには一部の客と半使い(貸金を折半して使うこと)して踏み倒している事実も明らかとなって、その悪質さに愕然としました。

 お客さんは疑いすぎるほどなのに、身内は完全に信用してしまう。そんなところが社長らしいといえばそれまでですが、昔からの社員に退職された寂しさにつけ込まれた感も否めず、どこか残念な気がします。

 さらに悲しいかな、当社の立件報道を見て、態度を変えてくるお客さんも現れました。高利を支払ってきたことを理由に返済を拒む客や、過去の取り立てについて被害届を出すと脅してくる人が続出して、その対応に苦慮したのです。

「あんたらがウチにやったことが、いま事件になったら大変だろ? あの時の金、全部返せよ」
「これ以上請求するなら、ウチからも刑事告訴するよ」

 いままで丁寧な口調で電話をかけてきていた人が、突然に脅迫的な態度で接してくるので困惑しましたが、ウチの会社が人の不幸に付け込む仕事をしてきた結果で、何も言い返すことはできません。仕方なく、退職された佐藤さんに電話をかけて相談すると、以前と変わらず親身に話を聞いてくれました。本音を明かせば不安でたまらず、とてもつらい気持ちでいたので、話を聞いてほしかったのです。

「さっきニュースで見て、連絡を入れようと思っていました。いろいろと大変でしょう?」
「はい。いま愛子さんと2人きりなので、もうどうしたらいいかわからなくて」
「そうでしょうね。こちらの仕事もあるので、空いている時間だけになってしまいますけど、できるだけ協力しますよ」

るり子さんお疲れさまでした
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