知られざる女子刑務所ライフ171

「闇バイトはやめとけ」「君らは捨て駒なんや」ラッパーの言葉から元女囚が考える“更生”

2023/06/11 17:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)
塀と空の画像
写真ACより

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける瑠壬(るみ)さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

岡山刑務所の最高齢受刑者は96歳

 まだ瑠壬の周囲はコロナの人も結構いてますが、世間の気分はもう「アフターコロナ」ですね。お祭りもどんどん復活して、お祭り好きの瑠壬はうれしいですが、コロナは怖いし……。

 微妙なところですが、ムショも運動会やお花見なんかの行事を再開してるようで、岡山刑務所の「2年ぶりの運動会」はネットニュースになってました。

 ちゅうか、ニュースの裏テーマは「ムショの高齢化」でした。岡山刑の懲役(受刑者)433人の平均年齢は54.9歳、3割の129人が65歳以上で、最高齢はナント96歳やそうです。瑠壬の頃は、さすがに100歳目前はいてなかったと思いますね。

 高齢化に合わせて、定番の綱引きとかかけっこのほかに「魚釣りゲーム」や、「卓球ラケットにボールをのせて走るリレー」とかの競技もあるとか。懲役にとって行事はめっちゃ重要なので、お年寄りでもできる種目は必須です。

 ちなみに岡山刑務所は、懲役8年以上で犯罪傾向の進んでいない受刑者を収容する施設で、収容分類級でいうと「LA級」です。8年以上の刑期はL(long)で、犯罪傾向の進んでいない――つまり初めてムショに入る人はAと分類されます。

 あと岡山刑務所には、有名人はあんまりいてないようですね。同じLA級の千葉刑務所は、綾野剛さん主演の映画『日本で一番悪い奴ら』のモデルになった元北海道警のイナバさんや、あとで無罪になった布川事件のお2人、オウムや左翼関係者など、いろんな人がいてます。

 有名人がいるからいいってもんでもないですけどね。

「悪い子はいない」――保護司さんのインタビューに共感

 「96歳の懲役」について、ちらっと書くつもりが長くなってしまいましたが、本題です。

 ネットニュースで町田市の地区保護司会副会長・鈴木幸夫さんが、「悪い子はいない。社会や大人がそうさせている」と、「東京新聞」のインタビューに答えている記事を見つけました。ホンマにそれやなと思います。

 96歳の懲役氏も、もともとは子どもです。町田市の保護司さんのような人に出会えていれば、違った人生もあったかもしれません。鈴木さんは元農協職員さんで、今は農業をしながら保護司さんをされてるそうです。

「一人一人をみると、みんな素直で良い子。家庭や環境に問題がある場合が多く、特に悪い交友関係があると、だめになってしまう」
「社会や大人が受け入れ、目が届くようにすれば、もっと犯罪は減らせる」

 もう鈴木さんの言葉ぜんぶが瑠壬の心に染みましたね。保護司さんが全員、鈴木さんみたいやったらええのに。瑠壬は弟子入りしたいくらいです。

 鈴木さんによると、やっぱり今も昔も窃盗事件が多いそう。クスリ(違法薬物)の犯罪も増えてるようですが、万引きとか普通にやりますからね。保護観察中に再逮捕される子もいてて、獄中(なか)からおわびの手紙が来たり、カノジョができた、とかのうれしい報告もあるそうです。

 もうほんと尊いお仕事ですね、保護司さん。

「留置所で気づいてももう遅いよ」ラッパー・SILENT KILLA JOINTさんのツイートに思うこと

 少年犯罪については、ムショ経験のあるラッパー・SILENT KILLA JOINTさんのツイートが話題でしたね。

「闇バイトはやめとけ 銀座強盗を成人の初犯で逮捕された場合にこれから待ってるのは 取調べ 裁判 刑務官から罵声を浴びせられ 狭い部屋で集団生活が始まり 部屋の中は縦社会で 殴りかかれば出所が伸び 6年前後の懲役を終えシャバ 親からの絶縁 賠償責任 手元に残る金なんてない 君らは捨て駒なんや」
「死に物狂いで犯罪を犯すなら 夢を掴む努力を何故しない サッカー選手になれなくてももっと身近に夢があるはず 家族を幸せにする 友達を幸せにする 彼女を幸せにする 大切な人の幸せな顔を見て幸せになれない人間はいないって 留置所で気づいてももう遅いよ」

 保護司の鈴木さんみたいな人はともかく、えらそうなオッサンに説教されるより、ラップは説得力あると思いました。

 同じツイートで、「拡声器を耳に当てられて、『お前は犯罪者やからな普通に過ごせると思うなよ』と怒鳴られてる人を大阪刑務所で見ました」とも書いてました。

 鼓膜が破れない限り、痕に残らない暴行として、男子刑務所ではありがちです。顔にオシッコやツバをかけたりするのと同じ。そんなんで更生しようと思えるわけがないです。

 「悪ガキの更生なんかムリー」とかゆうてる人は、明日は被害者かもしれませんよ。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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Instagram:@rumichibi1209

瑠壬公式YouTube

最終更新:2023/06/11 17:00
闇バイトに手を染める若者が減りますように
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