コラム
母子支援の現場から

閉じられた家の中で苦しんでいる母親に手を差し伸べたい――浮気と暴力を振るう夫に悩む家族【前編】

2022/09/25 18:00
坂口鈴香(ライター)

 夫は反省するどころか、自分は被害者だと言い放ったという。幸い、古川さんが産後TOMOサポの「産褥ヘルプ」に支援を依頼したことで、家族の危機はいったん収束した。

「第三者が家庭に入ると、夫の暴力には歯止めがかかりました。産褥ヘルプの支援者が私に『よく頑張っているね』と声をかけてくれると、夫も『妻も頑張っているんだ』と気づくことができたのでしょう」

 こうして、おさまったかのように見えた夫の浮気とDVだったが、数年たつと再び浮気の兆候が見られるようになった。

「あるとき、私の留守中に夫が子どもに暴力を振るっていたようで、戻ったら子どもたちが布団に隠れて震えていました。当然子どもたちから『パパは叩くから嫌だ』と言われるようになり、ますます浮気相手のもとに入り浸るようになりました。さらには『お前の食事がまずい。こんなもの食えるか』などと難癖もつけるようになったんです」

 離婚を考えるうえで決定的だったのが、夫が古川さんに無断で家を購入しようとしていたのが判明したことだった。浮気相手のところに入り浸り、妻子にはDVをする夫が、なぜ家を買おうと思うのか、まったく不可解だ。

 ともかくそれを知った古川さんは、すぐに弁護士に相談した。そのころには古川さんも夫との離婚を考えるようになっていたのだ。夫が家を購入すると財産分与に支障をきたすとアドバイスされたため、古川さんは意を決した。子どもを連れて家を出たのだ。行く先のあてはなかった。

(取材協力:産後TOMOサポ

ーー後編は10月9日

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2022/09/26 11:18
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