芸能
[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

「同性愛は治療で治る」韓国・ユン大統領秘書の発言が炎上! 映画『私の少女』が描く「LGBTと社会」の現在地

2022/05/20 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

 2人の主人公、ドヒとヨンナムをLGBTに対する偏見や差別という暴力を軸に捉えると、ドヒが象徴するものは明らかだ。家庭内暴力やいじめにさいなまれ、少女としての健全な成長も、平凡な生活を送ることもままならないドヒは、嫌がらせやヘイトなど、あらゆる暴力によって成長を阻まれ、社会として依然未熟な状態に置かれている韓国の「LGBTをめぐる社会的現実」を象徴する存在といえる。

 こう考えると、偏見や差別という暴力にさらされ、傷ついたまま自らを抑圧の中に閉じ込めている「LGBTの当事者」であるヨンナムが、ドヒをこれ以上暴力の渦中に放置してはいけないと、必死に保護しようとするのは当たり前のように見える。ヨンナムにとってドヒを守ることは、「LGBTをめぐる社会の成熟」を確保することにほかならない。

 だが、2人の前には儒教的な男性中心主義の象徴ともいえる継父や、その男性中心主義に加担する祖母が立ちはだかっている。継父はヨンナムを警察署長としてではなく女性として常に見下し、「親が娘をしつけるのもダメってことか」と何の罪意識もなくドヒに暴力を加える、典型的な儒教的男性だ。彼こそがドヒの成長を妨害する最大の敵であり、立ち向かって闘わなければならない壁なのだ。

 また、祖母は息子のヨンハに対し狂気に近い執着を見せる、男児選好の亡者のような存在だ。「お父さん(息子)の言うことを聞かない」という理由でドヒを容赦なく殴ったり、ドヒに暴力を振るう息子を逮捕しようとするヨンナムに向かって「私の息子を殺す気か!」と怒り狂う祖母の姿からは、韓国における「息子に対する母の執着の強さ」が垣間見える。ドヒは、そんな儒教的男性中心主義の暴力の中に監禁されているといえるだろう。

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