老いゆく親と、どう向き合う?

「義弟から聞いてゾッとした」認知症の母の介護を妹夫婦に任せた兄、背筋が凍ったと話す事情

2022/01/23 18:00
坂口鈴香(ライター)

「妹の好きにさせてやりたいと思う」

「妹は、学生時代に付き合っていた男性と結婚の約束をしていたんです。県外の人でした。でも、ボクが東京で就職して地元に帰ってくることはないだろうからと、親が妹に地元にいてほしいと頼んだんです。そして地元の公務員と見合いをして、実家近くで家庭を持った」

 真理さんは、それから父親を見送って、一時は澄子さんを引き取って介護もしてくれた。

「だから、今妹が田舎を離れてどんな毎日を送っているのか、これから先のことをどう考えているのかはわからないけれど、妹の好きにさせてやりたいと思うんです。ときどき、妹のダンナがボクに『なんとかならないですかね』と電話で泣きついてきます。義弟には申し訳ないけれど、今は義弟の話を聞いてあげるくらいしかできません。そうして陰ながら妹を応援してやりたいと思っています」

 真理さんは「離婚はしない」と言っているらしい。それは義弟への情なのか、老後の計算なのかはわからない。澄子さんのもとに通う生活がどれくらい続くのか、夫婦の関係が今後どう変わっていくのか、冷静な真理さんにも読めないのだろう。

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2022/01/23 18:00
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