[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

ベトナム戦争の虐殺被害者の証言と市民同士の連帯を映した、韓国ドキュメンタリー映画『記憶の戦争』

2021/11/19 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

女性監督ならではのまなざしが最も際立つ場面

(C)2018 Whale Film

 タンさんは、日本軍「慰安婦」問題の解決と謝罪を求める集会にも参加し、同じ戦争被害者として元「慰安婦」のおばあさんたちと交流する。加害の主体が誰であれ、戦争という極めて男性中心的な暴力の被害者は女性であり、同じ過ちを繰り返さないためには国境を超えた女性の連帯が必要だ――こうしたメッセージが読み取れるこの場面は、女性監督ならではのまなざしが最も際立っているように思われる。

 その後もタンさんは、韓国政府に対して真相究明と被害の回復措置を訴え続けたが、返ってきたのは「ベトナム当局との共同調査の条件が整っていない」ことを理由に事実上拒否する回答だった。20年4月、タンさんは韓国政府に損害賠償の訴えを起こし、映画はその事実を伝えて終わる。

 その後の推移を簡単に述べるならば、韓国政府は虐殺の立証が不十分であると請求棄却を求めたり、調査記録を国家情報院に照会しようとした裁判所からの要請を拒否したりと、相変わらず非協力的な姿勢を貫いている。最新の報道によると、裁判所は虐殺の証言をしてきた元参戦軍人を証人として認め、間もなく出頭して証言を行うらしい。裁判結果によって政府がどのような対応を見せるか、虐殺を認めるか否か、引き続き見守る必要がある。

ベトナム戦争と韓国、そして1968
証言できる人が減っていくと考えると、恐ろしいな
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