[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

韓国サイコホラーアニメ『整形水』が描く、“整形大国”になった儒教社会の落とし穴

2021/09/17 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

 近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし、作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは韓国映画を通じて韓国近現代史を振り返り、社会として抱える問題、日本へのまなざし、価値観の変化を学んでみたい。

『整形水』 

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 「整形」と聞くと、私には頭に浮かぶ2つの記憶がある。ひとつは今から10年ほど前、偶然目にしたあるテレビドキュメンタリーだ。顔と体に重度のやけどを負った韓国人女性を取り上げたその番組では、韓国で数多くの病院を転々としたものの、すべての病院から「手術は不可能」という絶望的な答えしか得られなかった彼女が、藁にもすがる思いで日本にやって来た様子を取材していた。そして、初めて訪れた病院の医師から「難しいが、希望はある」と言われて号泣した彼女は、数カ月後、手術を経てやけどの痕がだいぶ改善され、カメラの前で明るくほほ笑んでいた。私は、日本の医療技術の高さと、それが傷ついた人々に与える希望に感心しつつ、整形大国といわれる韓国で、なぜそれができないのかを不思議に思った。

 もうひとつは、知人女性のことである。私が就職して間もない1996年、ある集まりで久々に会った彼女の印象が、以前とは変わったような気がしてならなかった。どう尋ねていいものかともやもやしていた私に、彼女のほうから「目と鼻を整形した」と明かしてくれた。なるほど、確かにまぶたは二重に、鼻筋は高くなっていて、前よりくっきりとした印象の顔に整えられていた。彼女いわく、両親に結婚をせかされ、相談所に行ったところ、整形を勧められたらしい。少しでも「美人」になったほうが、より良い男に出会えるチャンスにつながる。考えてみれば、当時こういった認識は、すでに根づきつつあった時代だったのだ。

 この2つの記憶から浮かび上がるのは、韓国における整形の現状である。なぜやけどを負った女性は、韓国での整形をあきらめざるを得なかったのだろうか。一方で、なぜ知人女性はいとも簡単に整形を受けられたのだろうか。もちろん、私は医療に関してはまったくの門外漢であり、ましてやその内部事情などはわからない。だが韓国メディアが報道しているように、韓国は人口100万人当たりの美容整形専門医の数が世界一(2014年国際美容外科学会統計)であり、それはソウルの街にあふれている美容整形医院が証明している。 

 一方で、やけどなど事故による体の損傷を回復させる再建整形病院は、大学病院など大規模な総合病院などごくわずかな数にとどまっている。実際、韓国での「整形」は美容整形を意味し、再建整形は美容整形に吸収されつつあるとの報告もある。こうした現状が、記憶の中にある2人の女性のケースを生み出したひとつの原因だといえるだろう。

 ならばなぜ、韓国では、美容整形医院だけが雨後のたけのこのようにはびこるようになったのだろうか? 「親からもらった体は命より大事」と、声を荒らげて教え込んできた世界一の儒教大国・韓国は、どうしてそれに反するどころか「整形大国」とまでいわれるようになったのだろうか?

 今回のコラムでは、日本公開を控えた整形を素材にしたホラーアニメーション『整形水』(チョ・ギョンフン監督、20)を取り上げ、韓国での整形の実態やその背景について探ってみたい。 
 

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