コラム
【連載】わが子から引き離された母たち

結婚15周年の記念日に離婚を切り出されたオーストラリア女性、日本人の夫とは家事の分担や仕事のことで行き違い、家庭内別居に

2021/09/19 18:00
西牟田靖

――彼が離婚したいと言いだした経緯を話してもらえますか?

 15年、16年と2人の関係はよくなかったけど、17年になると少し関係が落ち着いてきていた。ミッドライフクライシスを乗り越えたんじゃないか、という手応えが、そのとき私にはありました。だから私、彼に提案しました。「出張から帰ってきたら、10月の結婚記念日を一緒にお祝いしましょう」と。彼が承諾したので、レストランのコース料理を予約しました。彼の出張の都合で数日遅れの日に。

――それは、どんなお店ですか?

 荻窪のスペイン料理店です。当日、子どもを残して2人きりで、バスで行きました。そのとき、私、結婚15周年を記念した贈り物を用意していたんですよ。

――それは素敵ですね。贈り物は何だったんですか?

 ギフトセットの箱に入った、クリスタルのワイングラスです。ペアで1万円もする高級なグラス。

――2人でごちそうを食べて、記念日を祝ったのですね。それでプレゼントは渡したんですか?

 いいえ。それどころではなくなりました。というのも食事の途中、突然、「離婚したい」と切り出されたんです。私はショックを受けて、固まりました。私が黙っていると、彼は「帰ろう」って言って、席を立ちました。

――コース料理なら、まだ出てきていない料理もあるでしょう?

 そうなんです。私たちの修羅場を見て、レストランのスタッフがパニックになりました。すごく困っていて、「メインディッシュのプレートがこれからです。どうしましょう?」と相談されました。すると、彼はさっさと会計を済ませて、店を出ていきました。

――ひどすぎますね。無理やり、関係を壊そうとしているフシすら感じます。それで、その後の家庭生活はどうなりましたか?

 家庭内別居です。それまでは、2人でダブルベッドに寝ていたけど、レストランで「離婚したい」と言われてから、彼は子ども部屋で布団で寝ていた。その後の11月と12月、本当につらかった。

――その後は?

 年が明けた後、子どもたちを連れて、オーストラリアへ戻りました。

    ***

 これは国をまたいだ別居なのか、それとも一時的な帰国なのか……。

後編へつづく

最終更新:2021/09/20 22:59
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