高橋ユキ【悪女の履歴書】

94歳、“オンナ詐欺師”の仰天「ホラ吹き」人生ーー「年寄りには親切に」を逆手に【岡山・高齢女性詐欺師:前編】

2021/01/29 17:00
高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

荒唐無稽なホラ話と札束の財布

「あのう、宿泊料は前金になっておりますが……」
「あ、そう。いくら?」

 取り出した財布を見て、また仰天。100万円近い現金がぎゅうぎゅうに詰まっていたのだ。トミヨは驚く女将に財布を示し、スラスラとこんなことを言う。

「これは小遣い。はした金よ。わたくし、身寄りも頼りもないけれど、財産だけは嫌になるほどあってねえ……」

 そしてさらに続ける。

「わたくしはね、島崎藤村の弟子だったの。そう、昔の文学青年なら、わたくしの名前知ってますよ。女流作家だもの。いま、94年の人生を回想して自叙伝を書いてるけど、この岡山の旅館のことも書いてみたいねぇ……」

 荒唐無稽なホラ話だが、札束で膨らんだ財布を見せられながらだと、真実味が増すのか、女将はすっかりトミヨを信じてしまった。

――後編はこちら

高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

傍聴人・フリーライター。2005年に傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。著作に『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)など。好きな食べ物は氷。

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Twitter:@tk84yuki

最終更新:2024/01/16 14:44
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