コラム
[再掲]悪女の履歴書

Dir en grey・京になりすました男だけじゃない! 「元華族」を偽り結婚式開催、マスコミを熱狂させた“伝説の詐欺事件”とは?

2020/10/23 18:02
神林広恵(ライター)
Dir en grey公式サイトより

 10月22日、世間をあっと驚かせる“なりすまし”による詐欺事件のニュースが報じられた。自らを人気ビジュアル系ロックバンド「Dir en grey(ディル・アン・グレイ)」のボーカル・京と偽る男が、内縁の妻である女性の父親から、合計約5400万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で逮捕されたのだ。

 この男は、自らの体に京と同じような入れ墨を入れており、これを見せることによって、女性や父親に「自分は京である」と信じ込ませていたとのこと。そして「所属事務所のオーナーに通帳を取り上げられて金がなくなった。金を貸してくれ」といっては、父親になんども金銭をせびっていたそうだ。また、テレビに京さんが出演した際には「あれは影武者」と説明、さらには実の母親にも京であると偽り、コンサートのチケットを贈ったこともあるなど、次々とその手口が明らかとなった。

 この大胆不敵ともいえる詐欺事件に、ネット上は震撼。「なぜ女性や父親はこんな大ボラに騙されてしまったのか?」という疑問が飛び交う一方、「大胆なウソのほうが案外バレない」と考察する者も見受けられ、一時Twitterでは「ディル・アン・グレイ」がトレンド入りを果たした。

 なりすましによる詐欺事件は、これまでも数多く起こってきただろうが、やはりDir en greyの京という有名人を偽った例は珍しいのではないだろうか。しかし、過去にはなんと、「宮家の後継者」とウソを吐き、マスコミや芸能人を巻き込んだ結婚式をぶち上げるという前代未聞の事件が起こっていた。「有栖川宮詐欺事件」と呼ばれるその事件を、今あらためて掲載する。
(編集部)


(初出:2016年11月20日)

「宮家の後継者」を自称、マスコミ・芸能人を巻き込んだ「有栖川宮詐欺事件」の女

世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

[第29回]
有栖川宮詐欺事件

 今から13年前、マスコミを熱狂させた珍妙な事件が起こった。

 すでに断絶していたはずの華族・有栖川宮家の後継者を名乗る人物と、そのパートナー女性による結婚祝賀を舞台にした詐欺事件だ。

 事件は2003年4月6日、有栖川宮家の後継者を名乗る有栖川識仁(当時41)と妻となるはずの坂上春子(仮名・当時44)による「有栖川記念奉祝晩餐会」と称した結婚式を舞台にしたものだ。このパーティは、カナダ大使館地下にある会員制のクラブで開かれたものだが、2人は結婚式の出席者375人からご祝儀など1350万円を騙し取ったとして、この年の10月21日に詐欺罪で警視庁公安部に逮捕されてしまう。

 有栖川を名乗る2人の存在は、結婚式以前から“あまりに胡散臭い”カップルとして一部メディアで話題になり、注目されていた存在だった。

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