コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

山崎ケイ、「ちょうどいいブス」炎上から学ばず? 番組のセクハラを「かわす」ことの怖さ

2020/07/02 21:00
仁科友里(ライター)

 不祥事とまではいかないものの、相席スタート・山崎ケイの「ちょうどいいブス」(男性に「酔ったらいける」と思われるレベルのブス)というキャラが、時代に即したジェンダー観感ではないとして炎上したことがある。なので、いま山崎が、ジェンダーに関する発言をする場合は、注意したほうがいいように思うのだが、渡部同様、以前炎上した理由をまったく理解していないと感じられる発言をしており、また同じような騒ぎを起こすのではと思ってしまった。

 6月24日、「よしもと芸人吉本オンラインイベントお披露目会」で、山崎は「ビジネスキス」の必要性について意見を述べた。テレビの企画で、女芸人同士を競わせて、勝ったほうにご褒美として、イケメンとキスをさせることがある。山崎はこれをビジネスキスと呼び、「女にとってのキスを何だと思っているのだろう」と嫌悪感を持っていることを明らかにしていた。「私がキスすることで面白くなる気がしない」とし、番組の演出でするキスをNGにしているそうだ。しかし、制作側には「え? キスがだめなんですか? ちょっとするだけですよ?」と理解されなかったという。「すごい、女がやりにくい世界だと思ってしまった」「嫌だったら嫌だと言わなきゃいけないし、男性側も『もしかしたら、もう時代遅れなのかな?』と思うべき。お互いが言い合える関係なら、ハラスメントも減っていくと思います」と述べていた。

 私自身も、ご褒美にイケメンと女芸人がキスをするという企画を面白いと思ったことはない。それでは山崎の発言に諸手を上げて賛成かというと、そうでもないのだ。

 山崎はビジネスキスの仕事をする際、「番組の趣旨もあるので寸止めにして、『この続きはカメラのないところでね……』みたいにかわすのはアリですか?』とスタッフに確認した」そうだ。オファーを受けた以上、番組の企画には参加しなくてはならない、けれど、ビジネスキスもしたくない、だから「カメラのないところで」と逃げたのだろう。しかし、このように「セクハラを嫌と言わず、逃げる」と、企画やセクハラに対する嫌悪がスタッフにまったく伝わらず、セクハラが悪化する可能性に気づいているのだろうか。

 今から20年くらい前、セクハラという言葉こそあったものの、現代のようにそれが「悪いこと」と認識されていなかった時代、女性たちはセクハラにあったら「かわす」ことで身を守れと、女性の先輩に教わってきた。具体的に言うと、上司に迫られたら「おしっこ行ってきます」と雰囲気をぶち壊したり、「これ、おいしいですね。もっと食べていいですか?」と話を変えたり、あえて気づかないふりをする。相手のほうが権力を持っているのだから、正面切って歯向かうのは得策ではない、だからといって下心を受け入れるのもイヤということから生まれた苦肉の策だが、この応急処置を続けると、セクハラは厄介になっていく。

 テレビ東京の大江麻里子アナが、『モヤモヤさまぁ~ず2』に出演していた時のこと。さまぁ~ずは大江アナに積極的にセクハラをしかけていく。「最近いつエッチした?」「コンドーム使ったことある?」と質問するいう直接的なものもあれば、筋トレ器具に座らされて、M字開脚にさせられることもあった。

 大江アナはこれに対して文句を言わず、キョトンとした顔で応じる。仕事だからやらないわけにはいかなかったのだろうと推察するが、その大江アナについて2013年に「週刊ポスト」(小学館)が取り上げ、「普通の女子アナだったら露骨にイヤな顔をするところですが、大江アナの場合はキョトンとしてやってのけるので、まったく嫌らしさを感じない。それどころか、受け答えのひとつひとつが、かえって品の良さを感じさせる結果となる。だからこそスタッフも、心置きなくセクハラ演出を楽しんでいたんです」というテレビ東京スタッフのコメントを掲載。最後に「硬派なニュース番組もこなせるのに、下ネタだってサラリとかわす。実力者はやはりひと味違うということらしい」と結んでいる。

 女性がセクハラから逃げるために「かわす」うちに、男性がセクハラを悪いことと思わなくなり、それを理由にセクハラが激化したり、そこから「仕事ができる女は、セクハラをかわすのもうまい」というふうに、ねじまがった解釈が生み出されることがあるわけだ。こうなると、セクハラを「かわせる女」と「かわせない女」に分断され、序列が生まれることもあるだろう。

 なので、山崎も番組の演出上のキスが心から嫌だと思うのなら、中途半端な拒絶はしないほうがいいのではないか。山崎は「ちょうどいいブス」を標榜して、炎上した“前科”がある。テレビで「セクハラをかわす」ように見える行動を取ることで、「セクハラを拒否しない女」のレッテルを世間に貼られれば、「ちょうどいいブス」同様、「男性の欲望に迎合する都合のいい女性像」を推奨しているとして、再炎上する可能性は十分にあると思う。

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