コラム
老いてゆく親と、どう向き合う?

老人保健施設で「廃人のようになった」母……「1カ月も放置された」と憤る娘の告白

2020/05/17 18:30
坂口鈴香(ライター)

 その後、状態が悪化しながら何カ月も放置していた老人保健施設の対応が納得できない直美さんは、八重子さんの死後、施設の医師やソーシャルワーカーなどのスタッフに説明を求めた。

「そのときに初めてわかったのは、1月に入浴させようとしたら手足にむくみがあったから、利尿剤を投与し、次に顔にむくみが出たので利尿剤を増やしたということでした。そのときに知らせてもらっていたら、利尿剤はやめてもらったのに。クリスマスの時点で明らかに母の様子がおかしかったんです。医師なら、なぜこのときに脳梗塞とか心疾患の疑いを持たなかったのでしょう。なぜ1カ月も廃人のようになったまま放置したのか。医師からは『脳梗塞・心不全は考えられたがその処置は取らなかった。申し訳なかった』と言われ、全員に頭を下げられたが、死んだ人は戻って来ない。納得できるわけがありません」

 直美さんにはささやかな夢があった。謙作さんが生きていたとき、八重子さんの施設と同じ系列の特養に申し込んでいて、そこで人生の最後を夫婦二人で穏やかに過ごしてもらいたいと思っていたのだ。

「母の死後、特養に挨拶に行って、申し込みは取り消してあります。それが、母の死から半年以上たって、特養から入所申請確認書類が来たんです。信じられますか? 異変を放置されたばかりではなく、遺族の心を踏みにじるような施設を許すことができません」

 直美さんは「私のような思いをする家族を増やしたくない」という一念で、この話をしてくれたのだという。

 今の直美さんを支えているのは施設に対する怒りなのかもしれない。わだかまりが消えるまで、直美さんの介護は終わらないのではないか。ヒリヒリした直美さんの思いが伝わってきて、胸が苦しくなった。

――次回は5月24日公開

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/05/18 16:25
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