コラム
老いてゆく親と、どう向き合う?

「おじいちゃんが救急搬送された」心不全の父と脳梗塞の母ーーひとり娘が背負った介護の現実

2020/04/12 19:00
坂口鈴香(ライター)

 まもなく、直美さんの仕事先にひとみさんから「おじいちゃんが大変な状況で、大病院に救急搬送された」というメールが入った。途中発熱があり、軽い肺炎を起こしかけていて危ない状態になったが、2週間の入院で無事退院することができた。

 自宅に戻ると、せん妄による暴力や暴言がひどく、直美さんは大変な思いをしたという。心不全には軽い運動も必要だった。八重子さんも脳梗塞のリハビリをする必要があったので、両親はデイサービスに通うようになったが、八重子さんの精神状態は波が激しかった。

「これは私が悪いんですが、そのころ手がけていた仕事がうまくいって、両親にも喜んでほしいと思って京都のおいしい卵焼きを買って来たんです。母も気分がよくなり、ほんの少しお酒をいただいたあと、片付けようとしていたら、ひっくり返ってしまいました。その拍子にガラスで手を切ってしまい、また血だらけで救急搬送。病院のベッドで転倒したときの恐怖もよみがえったのでしょう。歩くと転ぶと思うようになり、それからふさぎ込むようになってしまいました。デイサービスにも行きたくない、デイサービスのお風呂もイヤだという。すると父までデイサービスに行かないと言い出しました。それからはデイサービスへの送り出しをするために、仕事を調整しなければならなくなりました」

 そんなとき、今度は父の謙作さん(仮名)がベランダで転倒し、頭に大ケガをしてしまう。タバコを吸おうとガラスの灰皿を持っていたため大出血し、全治1カ月の傷を負った。

――続きは18日公開

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/04/12 19:00
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