コラム
オンナ万引きGメン日誌

女性ホームレスが交番で突然死! 「万引き犯の遺体」に対面――Gメンの「重い」経験

2020/02/29 16:00
澄江(保安員)

 なるべく早く捕まえて、警察署に行く。大物を欲しがる店長の戯言は無視して、たとえ1点であっても見逃さない気持ちで業務を始めると、1時間ほど経過したところで、過去に捕らえたことのある地元で有名な女性ホームレスの方が入ってくるのが見えました。彼女の姿を見るのは、2年振りくらいでしょうか。まだ50代後半と若いこともあって、意外と小奇麗にされているし、異臭を放つこともないので、一見するとホームレスの方には見えません。でも、ところどころに穴の開いた上着を見れば、その生活背景が垣間見えるような気がします。

(また、やりに来たのかしら)

 ホームレスの捕捉は、お店の人を始め、警察からも嫌がられます。そのニオイや状況をはじめ、中にはあえて刑務所入りを目指す“志願兵”も存在するなど、さまざまな事情から扱いを敬遠されるのです。ましてや、この人は地元の有名人で、なにかあると大声で喚き散らす札付きの嫌われ者。捕まえたとしても誰も喜ばないので、なるべくなら関わりたくないのですが、前に捕らえた人の再犯行為を見過ごすわけにもいきません。今日はやらないでと、心の中で願いつつ彼女の行動を見守ると、願い空しく犯行に至ってしまいました。パックの日本酒とおにぎりを、二つずつ、持参のレジ袋に隠して外に出たのです。以前に声をかけた時には、「関係ないから」と大声を出して逃走を図ったので、今回は腰元を掴みながら声をかけることにしました。

「こんにちは。またお会いしましたね。お元気でしたか?」
「へ? あんた、誰だっけ? 役所の人?」
「いえ、ここの保安員ですよ。袋に入れたお酒とおにぎり、お金払っていただかないと」
「ああ、思い出したわ。いつもお世話かけて、申し訳ない」

 以前とは違い、殊勝な態度で同行に応じてくれたので、どこか拍子抜けした気持ちで彼女を事務所まで連れて行くと、私たちに気付いた店長が事務所のカギを閉めて入室を拒絶しました。扉の脇にある小窓を開き、私を呼び寄せた店長が、小さな声で指示を出します。

「どうせまた、酒とおにぎりだろ。悪いけど、相手をしている暇はないよ」
「はい、お察しの通りですけど……。どうしたらいいでしょう?」
「買い取りもできないだろうから、駅前の交番に置いてきてくれる? 出入禁止と厳重注意でかまわないから」
「はあ」

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