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『あさイチ』女らしさの呪縛特集が反響、反発しつつ押し付ける女性も

2020/01/22 20:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

今月22日の『あさイチ』(NHK)は、「女らしさを押し付けないで!」という企画を放送した。放送中からネットでも話題になったが、どのような内容だったのか。レビューしていきたい。

 番組冒頭に流されたのは、竹内涼真と浜辺美波が出演する味の素の調味料「Cook Do(クックドゥ)」のCM。このCMでは、兄役の竹内が料理をつくり、妹役の浜辺はそれを手伝うでもなく、座って出来上がるのを待っている。

 そこに、従来のCMで多く見られた、母親や妻などの女性が料理をつくり、それを男性が待つという構図はない。このCMで描かれるのは、「美味しい料理を作るお兄ちゃん」と、「美味しい料理を頬張る子どもたち」である。ちなみに「父と母」も食卓に登場し、長男らしき竹内の作ったごはんを一緒に笑顔で食べている。

 民間のシンクタンクで女性のライフスタイルを研究する村田玲子さんによると、CMでの「女らしさ」の描き方は、急速に変わってきているという。

 食料品のCMでは、女性が口の周りに食べ物を飛び散らせながらも頬張る、というものを増えたそうだ。「女は上品に」といったステレオタイプからの解放だろう。

 しかし私たちの日常生活にはまだ「女らしさ」の呪縛が残る。

「結婚と出産が女の幸せ」を娘に押し付ける母親
 『あさイチ』が街頭で女性たちに「女らしさ」についてリサーチすると、「世間一般的にはスカートを履いている方が女らしいと認識される」といった声があった。

 そうして「女らしさ」の押し付けに悩む複数の女性のインタビューVTRが紹介された。

 職場に「女らしさ」の呪縛が残っているという40代の女性・ミズホさん(仮名)。ミズホさんは福祉施設で働いているというが、女性の上司は、1日の最後にする掃除や食器洗いといった仕事を女性スタッフだけでやるように指示するという。

 掃除や食器洗いといった家庭的な仕事は女の役割という価値観に、ミズホさんは違和感を持っているそうだ。

 また、母親からの「女らしさ」の押し付けに悩む女子高校生・ヒナさん(仮名)。彼女は将来、教員になりたいというが、母親が「結婚・出産をすることが女の幸せ」という考えを押し付けてくることに悩んでいる。

 たとえば、母親の将来は教員になりたいという話をすると、<ヒナは女の子なんだし、先生になるなら実家の近くの学校に勤められるといいわね>など、結婚して子どもを産むことを前提とした話をするそうだ。

 ただ、ヒナさんは母親の気持ちもわかるという。ヒナさんの母親は職場結婚だったそうだが、男性である父親はそのままで女性である母親だけ退職を促されたという。仕事にやりがいを感じていたものの、泣く泣く退職し家庭に入った自分自身の人生を肯定するために、娘に結婚や出産を押し付けているのではないか……とヒナさんは推測する。

 また、娘に黒い服を着せていたら、知人から「女の子なのに男の子みたいな服を着せられてかわいそう」と言われた経験を持つ女性もいる。女性は、性別に関係なく、子どもに似あうかどうかで服を選んでいるため、衝撃を受けたそうだ。

「女らしさ」に違和感を持ちながら、他人には「らしさ」を求めてしまう
 しかし、「女らしさ」の押し付けに違和感を持ちながらも、他人には女性らしさを求めてしまうこともある。

 たとえば前出ミズホさんの場合、職場の若い女性スタッフが「喰った」「うまい」といった言葉遣いをしていると、気になってしまうという。男性の場合はそうした言葉遣いをしていても気にならず、自分でも「矛盾している」と感じているという。

 また、仕事をしながら3人の子どもの子育てをするユリナさん(仮名)も、矛盾を抱えている。ユリナさんは昔、仕事から帰ってきて彼氏に夕食をつくり、食後に一息ついていると、彼氏からお皿をすぐに洗わなかったことを咎められたそうだ。

 ミズホさんは自分の息子には「家事を押し付ける人になって欲しくない」と、家事を仕込んでいるという。しかし、テレビや漫画、アニメで「片づけができる女がいい女」というシチュエーションをみると、やはり男性はそういう女性が好きなのかと思い、娘には「幸せな結婚生活を送ってほしい」という思いから、家事をやらせているそうだ。

 40代以降の女性ほど、女性は結婚することが幸せ、家事育児は女性の仕事、女の子はピンクが好きといった“役割”を、幼いころから植え付けられてきただろう。「女らしさ」に違和感を持たず受け入れている女性も大勢いる。そして自分は「女らしさ」を窮屈に感じながらも、娘や若い女性にそのような指導をするとしたら、「女らしさ」を受け入れたほうが生きやすいであろうと考えるからだ。

 「女の子は結婚に逃げられるという感覚を女性が持ってしまっていることは、日本の男女平等が進まない要素のひとつな気がします」という視聴者の声も紹介された。

「女らしさ」を武器にする女性
 番組では、女らしさを“武器”にしているという声も紹介していた。番組の電話取材に応じた女性は、コミュニケーションを円滑に進めるために、「女らしさ」を利用していると話す。

 女性によると、男性の同僚と話す際は自然なボディータッチをする、男性上司との会話では相手を褒めて気分をよくさせると、コミュニケーションがスムーズにいくという。

 また、職場の女性部下が「女らしさを武器にしている」と感じているという男性の声も紹介。女性部下に注意をすると泣いてしまうことがあるため気を使うといい、<泣けば済むと思っている>と不満を漏らしていた。

 「女は泣けば済むと思っている」。よく聞くフレーズだ。泣きたくなどないのに、怒りや不甲斐なさから涙が流れてしまうこともあるだろうが、泣いたら終わりなのである。許してもらうためのいわゆる“泣き落とし”ではなくとも、「女は泣けばいいと思っている」「女は感情的だ」などと言われてしまう。

 この男性の意見にスタジオの近江友里恵アナウンサーは<泣けば済むと思っていると思われているのがくやしい>と、苦言を呈した。

「女らしさ」「男らしさ」ではなく「自分らしさ」
 「女らしさ」があれば「男らしさ」の呪縛も存在する。「男の子なんだから我慢しなさい」「男なんだから一家の大黒柱になるのが当たり前」など、強くたくましく、仕事に励む男性が「男らしい」とされてきた。

 番組では、男らしさを辛いと感じている男性にも取材。ある男性は、「男だから」という理由でPTAの会長を押し付けられたのが嫌だったと明かす。PTA役員の女性たちは「男だから人前で話すのが得意」と思っているというが、<それは個人個人の話>だと説明する。 ちなみにPTA会長は、全国的に「会長は絶対に男性」という地域が圧倒的に多い。「人前で話すのが得意そう」という理由だけではないようだ。(参考記事)

 また、看護師の男性は「男だから」と夜勤の見回りを多くさせられることが苦痛だという。

 「女らしさ」「男らしさ」への違和感を表明する人もいる現代。『あさイチ』が提案したのは「自分らしさ」を大切にすることだった。自分、そして他者の「自分らしさ」を大切にする人の例として、タレントのりゅうちぇるさんのインタビューを放送。りゅうちぇるさんは過去の番組でも「偽りの自分に慣れたら、人に何も教えられない」と、「~らしさ」のフレームに自分を無理に合わせようとしないことの大事さを説いていた。

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 昔は「女だから」「男だから」と大きすぎる属性で人の人生をざっくり分類するような、雑な時代だった。いや、今もまだ、私たちはその時代を生きている。けれども「ひとりの人間として尊重してほしい」と声を上げ、また自分も他者を尊重することができる時代になってもいる。大手企業のCMもそうだが、呪縛を自覚し、解消しようという流れは確かにある。

最終更新:2020/01/22 20:00
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