女のための有名人深読み週報

Mattが美容家として成功しそうなワケ――叶姉妹、IKKOに通じる才能と「嫉妬買わない」戦略

2019/06/13 21:00
仁科友里

Mattの強みとは何か?

 Mattのテレビ初出演は、17年1月の『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)である。ブライダルモデルをしているというMattは髪を金に染め、カラーコンタクトをつけ、顔の彫りを強調するメイクをするなど、白人に寄せたかのような装いで、インパクトは大きかった。美容に思い入れがあることは一目瞭然で、本人いわく「お小遣いはもらっていなくて、カードで支払う」「月に100万円使ってしまったこともある」とけろっとしたものだった。

 父である桑田氏と言えば、Mattとは反対に苦労人として知られている。子どもの頃、桑田氏の父が事業を興しては失敗し、家は貧乏だったという。息子の才能に気づいたのか、それともたまたまなのか、父は桑田氏をプロ野球選手にするために、小さい時から猛練習を開始する。プロ野球選手になるには体づくりも大切だが、桑田家にはおカネがない。そのため、母親は「私はおなかいっぱいなの」とウソをついて、桑田氏に肉を食べさせていたそうだ。そのせいか、桑田氏は「プロ野球選手になって、お母さんにラクをさせてあげたい、家を建ててあげたい」という夢を持っており、巨人軍入団早々、母親に家をプレゼントしたという。しかし、その桑田氏の息子は親のお金で贅沢三昧。ネットでは「桑田は子育てに失敗した」という書き込みも見られた。

 最近はMattをテレビで見ることがなくなっていたが、5月30日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に半年ぶりに出演し、久しぶりにお茶の間に姿を現した。ダウンタウン・松本人志は、出演者の中では群を抜いて肌の白いMattを「外国人の子どもが遊ぶおもちゃ」、勝俣州和は「トイ・ストーリーに出てくる」と、やんわり人工的だと描写するが(余談だが、叶姉妹も出始めの頃は人工的と言われていた)、当のMattはネガティブにとらえた様子はない。整形については否定しつつ、今後も自分の目指す美に向かって、ひた走ることを宣言したのだ。

 Mattの強み、それは豊富な資金力による体験的な美容が語れることではないだろうか。充電期間、Mattが試したのは、まつエク(450本)、ケミカルピーリング、エレクトロポーション、ビタミン注射、白玉点滴、ヒーライト、ジェルネイルだそうだ。運動してダイエットをするというような自力美容ではなく、Matt美容は医療の力を積極的に借りるものが多い。自費診療にあたるものが多いので、ある程度の資金力がなくては無理だ。タレントとしてのMattの収入ではまだこれらの美容代をねん出できるかどうか疑問ではあり、桑田氏というスポンサーがいればこそできる技だろう。「お金のことは話しちゃいけないって、お父さんに言われてる」と、Mattは美容代について直接的な金額を明かさなかったが、「親のお金で贅沢している」という嫉妬を買わないために、有効な対策と言えるだろう。

 一般人の中にも、これらに挑戦したいという気持ちを持つ人は多いだろうが、値段が高いので、そう簡単に手は出せないし、だからこそ効果のあるものだけに挑戦したいと思うのではないか。その場合、Mattのように、実際に試して効果を見せられる人というのは、重宝されるだろう。IKKOは化粧品や美容法は語っても、こういった美容医療についてはコメントしないので、領域がかぶらないのもよい。

 さらにMattは、コミカルな部分も持ち合わせている。美容に気を使うわりには、朝から唐揚げ15個とご飯を食べ(サラダなどの野菜は食べない)、食後のデザートとしてチョコレートをたっぷり塗ったレーズンパンを食すなど、脂質・糖質が多めの食生活を送っている。あれだけ肌に気を使いながら、食生活はいいんかい! とつっこめる部分は、特に若い世代にコミカルに映るのではないか。

 また、Mattが最高に女性向けだなと思うのが、スピリチュアルが好きなところである。インスタグラムのストーリーズでは、“波動”について触れている。「地球と宇宙には、約1週間の時差がある」「自分が1ミリでも思ったことは大体1週間後に結果として出てきて、あなたにたくさんのミッションを与え、そこに人間は対応しています」といった具合に、もともとスピリチュアルが好きな人、もしくは悩みを抱えている人が惹きつけられるであろう内容を公開しているのだ。今後、Mattがタレントとして露出が増えれば、この波動説を証明したとされ、ファンはもとより、スピリチュアル界隈からのオファーも増えるだろう。

 二世タレントは多いが、芸能界は厳しいので、親の名前を抜きにして活躍できている人というのは、ごく少数である。Mattが二世チームのトップに立つ日は、案外遠くない気がする。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

最終更新:2019/06/13 21:00
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