外資系戦略コンサルタント・CuteStrategy氏寄稿

1回1,000円で担当とハグ……男性地下アイドルが“過剰な”ファンサービスを続ける本当の理由

2019/05/26 16:00
CuteStrategy

 昨今、男性地下アイドルの“過激なファンサービス”が注目を集めている。ライブ会場に訪れたファンとアイドルがハグをしたり、指越しにキスをしたりと、「粘膜の接触以外はOK」とされているグループは少なくない。彼らのファンはその過剰なサービスを求め、1人で月に数十万円、数百万を消費することも珍しくないという。しかし、このようなビジネスモデルは、今後も“安泰”でいられるのだろうか。モノを売らずにサービスを売るアイドルの未来について、外資系戦略コンサルタントでアイドルビジネスのアドバイザーも務めるCuteStrategy氏に分析、寄稿いただいた。

男性地下アイドルグループの誕生と、現在の状況

 2005年に東京・秋葉原の小劇場で生まれた「AKB48」は、「会いに行けるアイドル」としてファンとメンバーの距離を縮め、これまでの女性アイドル像を大きく覆した。さらに、CDを購入したファンが、次回シングル曲の歌唱メンバーを投票で決める「選抜総選挙」というセンセーショナルなイベントがテレビで放送され、一般認知されるように。「SKE48」「NMB48」といったファミリーグループの展開も、一時的なブームではなく、持続的に活動できる基盤を作り、“地下”から芸能界全体に大きな変化をもたらすほどの女性アイドルグループに成長した。

 そんなAKB48の成功に続けとばかりに、2,000~3,000組とも言われる女性アイドルグループが全国各地に誕生。音楽・映像制作ソフトの低コスト化による初期投資の低さと、「モノの消費」から「経験の消費」へと変化する時代の流れを受け、「アイドル戦国時代」と呼ばれるブームが生まれた。しかし、16年ごろよりその勢いは収束し始め、「乃木坂46」「欅坂46」といった一部人気グループを除き、徐々にライブ会場が小規模化。戦国時代に生まれた多くのグループが、解散する憂き目に遭う。

 一方、男性アイドルグループも、ジャニーズ事務所による独占状態を切り崩そうと、AKB48の戦略やビジネスモデルを参考にし、「会いに行けるアイドル」をコンセプトとした接触サービスや、SNSなどのWebメディアを活用するグループが増加。10年代初めには、大手芸能事務所から「超特急」「DISH//」、名古屋のご当地アイドルとして「BOYS AND MEN」などが誕生し、ジャニーズに一極化していた男性アイドル市場を動かした。

 しかし18年、ジャニーズ事務所の若手グループ「King&Prince」が、デビューシングル「シンデレラガール」を初週57.7万枚売り上げたのに対し、超特急は結成5年目の17年にリリースしたシングル「超ネバギバDANCE」は、初週7.3万枚という結果だった。BOYS AND MENはここ最近、シングルを10万枚以上安定的に売り上げているものの、やはり初週ランキングではジャニーズグループに第1位を奪われる現状だ。

 10年代初めにデビューしたジャニーズ以外の男性アイドルが伸び悩む中、10~15年には新たな男性アイドルも多く誕生。しかし、前述した通り、ジャニーズ以上の人気を誇る男性アイドルグループを生み出すことは難しく、必然的に、ジャニーズ以外の男性アイドルファンも増えにくい。そのため、多くの男性アイドルは、キャパシティ200~300人程度の小規模なライブハウスなどを活動の主体としており、“地下アイドル化”している現状がある。

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