ジェンダーレス明確に示す『プリキュア』『セーラームーン』、反発の動きも目立つ

12月2日放送の『HUGっと!プリキュア』(以下、はぐプリ/テレビ朝日系)42話で、主人公・野乃はな(=キュアエール)たちと同級生の男子・若宮アンリが、プリキュア戦士・キュアアンフィニに変身した。プリキュアシリーズ史上初となる男の子のプリキュア誕生は、ネット上で大きな話題となっている。

 「女の子だって暴れたい」というコンセプトから2004年に始まったプリキュアシリーズ。15周年の節目となる今年の『はぐプリ』は、これまでのシリーズ以上に明確に、ジェンダーバイアスからの解放、多様性を打ち出している。自分の心も他者の心も尊重しようというメッセージを、幼い視聴者にもわかりやすく発信している作品だ。

 特に話題になったのは6月10日放送の第19話で、やはり若宮アンリが登場しジェンダーレスな価値観を披露した回。アンリは中学生ながら美形の男子フィギュアスケーターであり、“大和撫子とパリジャンのダブル”で帰国子女。学校制服のネクタイをリボン結びにし、髪も耳にかけられるくらい長い。

 そんなアンリを<女子みたいだよ、君の格好><男子の中で浮いている>と批判し、<ヒーローって男のための言葉だよ。女の子は守られる側だ。言葉は正しく使わなきゃ><女の子はヒーローにはなれない>とプリキュアの存在を否定する少年に対して、野乃はなは<誰の心にだってヒーローはいるんだよ! 人の心をしばるな!>激昂。アンリも<ボクは自分のしたい格好をする><ボクは君のためにボクをかえることはできない。誰に何を言われたってかまわない。ボクの人生はボクのものだ。ボクはボクの心を大切にする>と、信念を貫くのだった。

 女の子はヒーローになれるし、男の子はお姫様になれる。『はぐプリ』には既存のジェンダーバイアスを取り除く作業を続けてきた下地があるだけに、男の子プリキュアが誕生したことは必然だったのだろう。そして、自分のしたい格好をして、自分の心を大切にし、自分の人生を生きる若宮アンリと重なる一人の青年が日本にいる。タレントのりゅうちぇるだ。

 というのも、11月に『美少女戦士セーラームーンCrystal』と『モンスターストライク』のコラボが実現し、りゅうちぇる、メイプル超合金の安藤なつとカズレーザー、モデルの多屋来夢が出演するCMがテレビで流れ、話題となった。アニメ『美少女戦士セーラームーン』は1992~1997年にテレビ朝日系で放送され、今なお根強いファンを持つコンテンツだ。このCMのテーマが、「ジェンダーフリー」。

 りゅうちぇるら4名がセーラー戦士に扮して登場し、「セーラームーンは女のもの。モンストは男のもの。そんなのもう古いでしょ?」「変身願望に、男も女もないよ」「自分が好きなら、それでいい」「壁なんて壊して、みんなで熱くなろうよ」「同じ地球(くに)に生まれたんだから」「いいじゃん!全員戦士!モンストセーラームーン。自由でいいんだよ」とメッセージを発信する。「楽しいことも、ジェンダーフリーに。」という字幕。たしかにモンスト好きの女性も、セーラームーン好きの男性も、珍しい存在ではないだろう。

セーラーマーキュリーに扮するりゅうちぇる。 りゅうちぇるは、今回のCMについて「ハフポスト日本版」で単独インタビューに応じていた。りゅうちぇるは、「男らしさ」「女らしさ」よりも「自分らしさ」を大切に考え、また自分の意見をしっかり持ち発信することで知られており、今回のCM起用は適役だ。

 現在23歳のりゅうちぇるは、いわゆる「セーラームーン世代」ではないが、小学生時代に見たことがあるという実写版ドラマやアニメの印象について<一人ひとりの個性が立っていて、すごくかわいい部分もあるし、キレイな部分もある。それでいて、かっこよく戦う。 その凛とした姿って、女性にすごく勇気を与えたし、男性も憧れたと思います。そういうところがすごく好きでした>と語っている。

 CMでりゅうちぇるはセーラーマーキュリーの衣装を着用しているが、<衣装はミニスカートを着てロングブーツを履いて、いわゆる『女の子』に人気のタイプのファッションだったんですけど…服やファッションって自由だし、誰がどんな服を着てもいいし、楽しむもの。服は自分を表現するものだから、全然違和感なんてなかったし、すごく楽しく撮影しました〉と振り返り、ジェンダーフリーがテーマのCMが全国放送で流れることに〈世の中が変わっていく流れの大きな一歩>と見ている。

 しかしその一方で、日本の化粧品売り場やメイクショップについて、<男の人が入れないわけじゃないのに、なんで女の人の写真ばっかりなんだろう?って不思議に思うんです。男の人でメイクする人もいるのに、って。だから、まだそこまではいってないんです>とも。

 メイク好きのりゅうちぇるは、2016年に出演したバラエティ番組のドッキリ企画で、「化粧してる男ってありえない」「子どもが生まれてもそのままでいるつもりなの?」「男らしくない」と非難された際も、「絶対かわいいパパでいます」「人に何を言われても負けないで、自分をしっかり持つ姿を見せる」と、子どもが生まれても自分のメイクやファッションは変える気はないときっぱりと語っていた。そして宣言通り、りゅうちぇるは今年7月、妻・ぺことの間に長男・リンクくんが誕生してからも、自分の好きなメイクやファッションを貫いている。

 りゅうちぇるのメッセージは、極めてシンプルだ。自分を大切にする。家事や育児など家庭内のことは、自分たちに見合ったスタイルで行う。他人に自分のやり方を押し付けない。家族は「身内」だから雑に扱ってもいいような文化のもとで育った人も今の日本には少なくないと思うが、家族という「身内」であっても相手を尊重し大切に扱うのが、りゅうちぇるの基本スタンスだ。妻のぺこ、息子のリンクくん、どちらにも価値観を押し付けないように意識しているという。

 ただ、そんなりゅうちぇるのスタンスがスタンダードかというと、わざわざメッセージを発信してインタビュー記事になるほど“特別”なことで、まだスタンダードとは言えないというのが実情だと思う。この社会には「男らしさ」「女らしさ」という呪縛が残っており、それを当たり前の前提として構築されたシステムがたくさんある。

 また、Yahoo!ニュースに転載された上記のりゅうちぇるのインタビュー記事には800件近くのコメント(いわゆるヤフコメ)が寄せられているが、りゅうちぇるを非難する内容が意外にも多い。の男がセーラー戦士のコスプレなんて「気持ち悪い」というコメントをはじめ、りゅうちぇるこそが他人に価値観を「押し付けている」という論調のコメントが多い。どういうことか。たとえばこうだ。

 <そういうのが好きな人は勝手にやればいいと思います。ただそれを認めて!とか言うのはまた別問題>

 <好きな人は好きだしで良くないですか?いちいち認めて下さい!みたいなのは要らないと思いますが…それに人それぞれと言うならそれを見て嫌がる人がいても、それも人それぞれの意見だから差別とか言わないで欲しい。自由を望むなら他人の自由の考えも認めるべきですよね、そういう方はその覚悟で言ってると思っていいんですよね…>

 <何でもかんでも公言すれば、良いというものではありませんし、公言するからには、賛成意見や反対意見があるのは当然です。 何かに過度に反応すれば、過度な反応が返ってくるのは当然です。本当に自分の意見や趣味、感性を大切にしたいなら、自分の中で大切にしてていただいて、 “自分の意見は正しい”“わかって”といったスタンスでガツガツ話さないでもらいたいです>

 <好きなことは好き!って自分自身で大切にしていけばいいと思います。自分が本当に好きで、大切にしているものって別に認めてもらおうとは思わないし、わざわざひけらかそうとも思わない。 結局は認めて認めて!って承認意欲が強すぎるから、最近のりゅうちぇるを見ていても、好きな事だけやっててもダメなんだなぁ。と思うようになりました>

 <男女らしさもジェンダーレスも、どちらの考え方にも一長一短はあり、どちらだけが正しいというものではない。にもかかわらず、最近のLGBTの押し付けにも似た正当性主張には逆の意味での差別感を感じる。男女らしさを大切に思ってはいけないの?>

 <この人は自分の意見を押し付けてくる。差別は良くないとは思うけど、人それぞれ考えがある。自分が正論だと思うのはいいが、自分の中だけにしてください>

 <ただの認めるの押し付けだろ。トランスもゲイもバイも普通の人は認める、認めない以前にそういう感覚で接してないと思うが 好きなら好きでいいじゃんってだけ。当人の被害者意識が強すぎて認める、認めないに拘り過ぎてるだけな感じがする。認めてないのは大抵当人の親だけだろ>

 <好きなら勝手にすればいい。ただ、私がそういう人を見て不快に思うことも感じてほしいし、私にそれを嫌いだという自由があることも分かってもらいたい。こういうCMで見かけたものはその企業の他の製品サービス含めて多分買わない>

 <りゅうちぇるの「個性を認めてくれない、受け入れてくれない、そんな世の中おかしいし、古い」ていう考えの押しつけこそが古くておかしいんじゃないかなー>

 <勝手にやってればいいだろ そういう概念を一般に押し付けんな>

 インタビュー記事の中でりゅうちぇるは、CMコンセプトが自分にとって共感できるものであったこと、自分と妻は家事・育児の分担を『男性』『女性』『父親』『母親』ではなく『ぺこりんとりゅうちぇる』として決めていることなど、自分の価値観や考えを語っているだけであり、「認めて」と訴えているようにも、押し付けているようにも見えなかった。しかし、「認めて」欲しがっているどころか、他人に自分の価値観や考えを押し付けているように捉えるユーザーも多かったようだ。

 また、昔だって少女漫画や女児向けアニメを好きな男の子はいたし、少年漫画や男児向けアニメが好きな女の子もいた、といった論調のコメントも見受けられた。実は12月2日放送の『はぐプリ』で男の子のプリキュアが誕生したことを伝えるYahoo!ニュース内の記事にも<ウチに関してですが子供達は、プリキュアが女の子男の子という事を気にして見てなかったです>といったコメントが少なからず出ている。こういったコメントにせよ、先に紹介した「認めて認めてと押し付けないで」と非難するコメントからは、「自分たちは差別も偏見もないのに、マイノリティの人たちは被害妄想を抱いて、権利ばかり主張してきてうんざり」という空気が漂っていることを感じる。

 LGBT当事者などマイノリティの立場にいる人たちや、彼らの立場に立つメディアは、マイノリティを取り巻く現状を説明し、誤解や偏見を解こうと情報を発信するが、その発信を「自分の権利ばかり主張してきてうるさい」と捉える人もいる。というか、広く発信されて目立つようになったからこそ、「うるさい」と捉えるユーザーも増えているという感じだろうか。

 思い出されるのが、今年7~9月に大きな波紋を呼んだ『新潮45』(新潮社)の大炎上だ。発端は、『新潮45』2018年8月号に自由民主党の杉田水脈衆議院議員が寄稿した「「LGBT」支援の度が過ぎる」というコラムだった。杉田議員は、まさに前述したような「マイノリティの主張がうるさい」との論調を展開していた。

 <朝日新聞や毎日新聞といったリベラルなメディアは「LGBT」の権利を認め、彼らを支援する動きを報道することが好きなようですが、違和感を覚えざるをえません>

 <しかし、LGBTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか>

 <リベラルなメディアは「生きづらさ」を社会制度のせいにして、その解消をうたいますが、そもそも世の中は生きづらく、理不尽なものです>

 <「生きづらさ」を行政が解決してあげることが悪いとは言いません。しかし、行政が動くということは税金を使うということです>

 その2カ月後に発売された『新潮45』2018年10月号では、30ページ以上にわたる特集「そんなにおかしいか「杉田水脈」論文」が組まれ、7人の書き手が杉田議員を擁護した。文藝評論家・小川榮太郎氏は<テレビなどで性的嗜好をカミングアウトする云々という話を見る度に苦り切って呟く。「人間ならパンツを穿いておけよ」と。 性的嗜好など見せるものでも聞かせるものでもない>などと綴り、しかしなぜLGBTの人たちがカミングアウトしたのかについて思案した様子はなく、<LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもないが、性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい>と無責任に断定。破綻した理論を展開して多大なる批判を受けた。

 このようなトンデモ論考を掲載した『新潮45』は出版業界内で大いに批判を受け、休刊。だが同様の主張、つまりLGBTや日本における外国人などマイノリティを不当に非難する過激な主張を掲載する雑誌は複数存在している。そうした論を好む層は少なからずおり、需要があるということだ。

 自分たちは差別などしていない。差別ではなく区別だ。マイノリティは正義ヅラして自分たちを悪者扱いしてくる。どうしてただ普通に生きているだけで悪者扱いされるのか。納得がいかない!……とりたてて“ネトウヨ”というわけでもない一般のマジョリティの中には、マイノリティが何かを主張するたびに、上記のような流れで嫌悪感を強めている人も少なくないのかもしれない。マイノリティの主張が、マジョリティへの糾弾として機能してしまうとき、両者はどこまでもすれ違うのではないだろうか。

 結果的に、杉田水脈の言う「そもそも世の中は生きづらく、理不尽なもの」との見方に則って、マジョリティの立場からマイノリティの“生きづらさ”を想像することなく、耳をふさいでしまう。両者のズレが広がり、分断されていく。

 一方で、もう今の時代、教育現場ではジェンダーレスが普通のことで、個性を尊重する教育も重視されていると実感しており、「日本は同調圧力が~」等の言説を聞くと違和感を覚えるという人も確かにいるのだろうと思う。ただ、前述したように、「マジョリティだって生きづらいのに、マイノリティの権利主張がうるさすぎ」「LGBTを不快に思う自由や嫌悪する自由もある」といった非難も多いうえ、それを政治家がやるのだから、日本という国は「もう充分にフラットで平等な社会だ」とは決して言えない。

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