ハラスメントを未然に防ぐ「ハラミ会」が物議 飲み会でのセクハラ対策、正解はあるのか

 瀧波ユカリによる漫画作品『モトカレマニア』(講談社)に登場する「ハラミ会」をめぐってTwitter上で議論になっている。

 月刊漫画雑誌『Kiss』(講談社)で連載中、先日コミックス第2巻が発売された『モトカレマニア』は、数年前に別れた元彼の存在を引きずり、“モトカレマニア”と化した主人公・難波ユリカ/27歳のOLが、転職先で元彼と再会して……という物語だ。

 「ハラミ会」は、そんな物語の本筋ではない。ユリカの転職先で元彼も働く小規模な不動産会社の男性社員たちによる、「ハラスメントを未然(ミゼン)に防止する会」の略称だ。

 コミックス第1巻、男性社員たちは仮採用として入社したユリカに「我々は一般女性とは飲みません(ホステスなどのプロとは飲む)」「だから歓迎会はないんだ」と宣言し、「オレ達『ハラミ会』の会員だから☆」「飲みの席でうっかりセクハラする自分に嫌気がさした男たちだけで飲む会なんだ」「女性が何で傷つくかオレらにはわかんねーんだよな~」「我々のことはダメ人間だと思ってくれてかまわないんで!」という。その会社はいわゆるブラック企業ではなさそうだが、女性社員はユリカ一人だ。

 転職したてのユリカは、「今の若い世代は飲み会を嫌うと言われていますが、銭がかからぬなら話は別」というちゃっかりした思考の持ち主で、新人歓迎会でのタダ飯を期待するも、男性社員たちの「ハラミ会」宣言で期待を裏切られ、友人・ひろ美に「『セクハラしちゃうから女はお断り』っていうのもセクハラじゃない?」と愚痴る。

 前述のように、作中における「ハラミ会」の描写は物語の本筋ではなく、わずか3ページほどに過ぎない。だがTwitter上では、本筋とはほぼ関係のない「ハラミ会」をめぐり、加熱した議論が繰り広げられた。

Twitterでは「ハラミ会」歓迎が多数
 ハラミ会への賛否でいえば、Twitterでは「否」よりも「賛」が多い印象だ。「対立を煽っている」「女性を排除している」と批判的な意見もある一方で、「素晴らしい配慮」「リスク回避」「理想郷」「合理的」「お互いのため」「君子危うきに近寄らず」「女性専用車両と同じ」「男子会のようなもの」と賛同する意見が圧倒的に上回っている。

 「どこまでセーフか」「どんな言動がセクハラになるか」がわからないから、男性は女性との接点を避けるしかなくなるのだ、といった声も頻出しており、多くの人がセクハラ問題に関心を持ち警戒していることの現れだと感じた。

 他方、男女間の対立構造が見えやすいTwitterの特性からか、「リベラルやフェミが頑張った結果」「フェミニストさんたちにコストを払い続けてもメリットない」「女性を恐れて逃げ出す男が現れた」など、ミソジニーを露わにするツイートも少なくない。関係性を放棄してしまう姿勢には、強い疑問を抱く。また、同性間であってもセクハラは起こり得る。

 様々な感想が見られたハラミ会。しかし、実はハラミ会はこれで終わりではない。Twitterで拡散しているのは、『モトカレマニア』第1巻の一場面だが、第2巻ではハラミ会のその後が描かれるシーンもあるのだ。

「昔の自由」は他の誰かを縛り付けていた
 仕事を頑張ったユリカは、正社員登用されることになった。ついにユリカの歓迎会が職場のメンバーで開かれる。「ハラミ会じゃなかったの???」と不審がるユリカに、社長は「つきましては我々一同飲みの場でのふるまいも一新したく」と説明。他の社員とも事前に話し合いを済ませていたようだ。

 社長は「下ネタトークやお下劣なゲームなども封印し 難波さんが参加しても我々に合わせて無理をすることなどないように努める所存であります」と宣言。ハラミ会だった男性社員たちも納得している様子だ。

 これは、作者の瀧波ユカリが提示したひとつの解決策と言えよう。拒絶するのではなく、相互理解と配慮。酔いに任せて好き勝手な言動で相手を傷つける“自由”は保障されないが、それはよくよく考えれば、他者と付き合ううえで最低限のマナーである。

 下ネタトークやお下劣なゲームなしで、男女の別なく仕事仲間とのコミュニケーションをとる。そのこと自体を、優等生的で窮屈だと見る向きもあるだろうが、「昔は自由で良かった」と振り返るとき、その「昔」の「自由」は、傍若無人だったり暴力的だったりしたかもしれない。批判と反省を込めて「昔」を懐かしむ姿勢が求められるだろう。

 厚生労働省は事業主に対して、職場におけるセクハラ・パワハラ対策を義務づけている。11月19日には、職場のハラスメント対策の骨子案が労働政策審議会の分科会で示された。骨子案では、企業にパワハラ防止の取り組みを義務付け、就業規則などでも対応方針を明記させるほか、セクハラ対策強化として、被害申告をした従業員に解雇など不利益に取り扱うことを禁じる規定を男女雇用機会均等法に明記する考えなどが示されている。また、取引先や顧客など社外の人間からセクハラ被害を受けた際の対応にも指針設け明確化するとのことだ。世の中は少しずつ、むしろ窮屈な枠組みから解放される方向へ前進している。

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