他局ドラマにまで出演する名物刑事、ゲストは大物スターばかり……『LAW & ORDER：性犯罪特捜班』のトリビア

　『LAW ＆ ORDER：SVU』の主要キャラクターであるオリビア。ラテン系移民が多く暮らすニューヨークが舞台ということもあり、オリビアが犯罪者や被害者とスペイン語で会話するシーンも頻繁に登場する。ほかのキャラクターも片言のスペイン語を話すシーンがあるが、オリビアを演じているマリシュカはスペイン語が話せるので、長い台詞も朝飯前なのだ。

　実は彼女、スペイン語だけでなく、ハンガリー語、フランス語、イタリア語も話せるマルチリンガル。ハンガリー語が話せるのは、父親で俳優のミッキー・ハージティがハンガリー出身であるから。ハンガリーの記者がドラマの撮影所へ取材に訪れた際には、流暢なハンガリー語で対応して、記者を驚かせた。マリシュカの母親が、セックスシンボルとして人気を集めた女優ジェーン・マンスフィールドであることは有名だが、ジェーンのIQは149もあり、5カ国語を自由に操ったと伝えられている。そのため、マリシュカの語学能力は母譲りだという説もある。

　そんなマリシュカは、『LAW ＆ ORDER：SVU』にゲスト出演したピーター・ハーマンと2004年に結婚。ピーターは生後2カ月から10歳までドイツで暮らし、母国語はドイツ語という俳優。2人の間には3人の子どもがおり、多言語に触れることで、この子たちも当然マルチリンガルだろうと期待されている。

4)フィン役のアイス・Tは、4話だけ出演する予定だった

　シーズン2から、オダフィン・“フィン”・チュツォーラ刑事として出演しているアイス・T。悪名高きストリートギャング「クリップス」のメンバーだった彼は、ギャングスタ・ラップの草創期にラッパーとして活躍。「汚職にまみれて、偏見が強く、暴力的で腐ってる警官よ、死ね！」とシャウトする「Cop Killer」という曲で社会問題を巻き起こし、一気に知名度を上げた彼は、長い間「警官の敵」と呼ばれていた。

　製作総指揮のディックは、俳優として活躍するアイスを高く評価し、人気刑事ドラマ『New York Undercover』や『ロー・アンド・オーダー／切り裂かれた死体』に出演させた後、シーズン1で降板した「ディーン・ウィンタースの代わりに」と『LAW ＆ ORDER：SVU』に迎えた。当初は4話のみの予定だったが、好評につきレギュラーへと昇格。今では、なくてはならない存在となっている。

　アイスはのちに、ディックから直々に電話をもらい、役をオファーされたと説明。「アイス、きみは警官が嫌いなんだろう？」「まぁね。警官全員ってわけじゃないけど」「とはいえ、警官の存在は必要だって認めるわけだろ？」「まぁね」というやりとりの後、「私たちが必要とするような警官を演じてくれ。頼むよ」と言われ、引き受けたのだと明かしている。

5)リチャード・ベルザーが演じるジョン・マンチは、クロスオーバー王

　シニカルでニヒルな『LAW ＆ ORDER：SVU』の名物刑事ジョン・マンチ。実はこの役が初登場したのは、『LAW ＆ ORDER：SVU』放送の5年前にスタートした『ホミサイド／殺人捜査課』（1993～2000）だった。ジョンは、『ホミサイド』全話に登場した主要キャラクターであり、番組終了後は同じ放送局の『LAW ＆ ORDER：SVU』にレギュラーとして登場。『LAW ＆ ORDER』『LAW ＆ ORDER：陪審評決』と他のシリーズにも顔を出すようになった。

　ここまでは理解できるのだが、ジョンはなんと他局である米「FOX」局のドラマ『X-ファイル』、米「UPN」局の警官ドラマ『The Beat』、米「HBO」局のクライムサイスペンス『THE WIRE／ザ・ワイヤー』にも登場。刑事ドラマだけでなく、メガヒットコメディ『30 ROCK／サーティ・ロック』や『ブル〜ス一家は大暴走！』、動画配信サイト「NETFLIX」のコメディ『アンブレイカブル・キミー・シュミット』と、合計して10のドラマ作品に顔を出しているのだ。

　1人の役者が演じるキャラクターが、これほどまで多くのジャンルを超えた作品に登場するのは例のないこと。そんなことから「ジョン・マンチはクロスオーバー王」と呼ばれるようになった。ちなみに、ジョンは『セサミストリート』にもマペットとして出演（声役はリチャードではない）。アメコミ本『スパイダーマン／デッドプール』にも登場しており、国民的キャラクターとして全米に愛されている。