コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

「公立中に進学してたら死んでたかも」いじめを受けた女子が、私立中学受験で得たもの

2018/07/29 16:00

 春が来て、麻美さんの姿はその学校の入学式にあった。その時、麻美さんは「あっ!」と小さな声を上げたという。なぜなら、壇上には、あのおばあさんがいらしたから。なんと、おばあさんはその学校の校長先生だったのだ。そして、早くも6年の歳月が過ぎ、この春、麻美さんは同校を卒業し、筆者にこう教えてくれた。

「もし、この学校に出会わなかったなら、もし、あのまま地元の公立中学にそのまま進学していたなら、私は今、この世にいなかったかもしれません……。ここでは天然パーマをいじられることも1回もなく、むしろ色が白くて細いなんて羨ましいと言われ続け(笑)、徐々にですが、容姿に対するコンプレックスが薄まっていったんです」

 麻美さんの知る限り、いじめとされるような出来事も一切なく、悔しい時にはみんなで泣き、うれしい時は本気で笑い……ということを丁寧に重ねていった6年間だったと、回想してくれた。

 問題の学習障害の方は、こういったやり方でクリアしていったそうだ。

「私の数学の点数があまりに悪い時も、先生方は決して見放さず補習をやり続けてくださいましたし、数学が得意な友達が、勝手に『麻美を留年から救う会』を立ち上げてくれて、みんなが助けてくれたんですよ」

 これぞまさに、学習障害を持っている我が子を、親が「咲きやすい場所に置いてあげた」ということなのだろう。学校オリジナルの発酵臭に包まれる時、人は安心して、自らの存在を肯定し、そして他者の存在を肯定する人間になっていくのかもしれない。

「りんこさん、私、あの時、校長先生がかけてくださった言葉に支えられています。『求めたならば、その扉はきっと開く』って。実は大学受験の時も、校長先生は私に同じことをおっしゃったんですよ(笑)」

 麻美さんは今、難関とされる大学で青春を謳歌している。「夢は学校カウンセラーになって、私のようにいじめでつらい思いをしている子どもたちの力になることです」と力強く語ってくれた。

 オリジナルの発酵臭が漂う学校には“マジック”がある。たとえ、小学校時代は、傷付き、涙に暮れていた子どもであっても、その6年間で傷を癒やし、再生していく。そればかりではない。「誰かの何かの役に立つ!」という生き方を力強く選択していく子に成長させる……そんな“マジック”のタネとなるのがこの発酵臭なのだ。

 その“マジック”を見せられる度に、筆者は「学校っていいな、仲間っていいな」と思うのだ。
(鳥居りんこ)

最終更新:2019/08/14 17:51
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