[サイジョの本棚]

楽しさ、孤独、不自由さ……疑似家族の繊細かつユニークな日々を丁寧に描いた3作品

――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

■『何度でも、おかえりを言おう』(バルバラ・コンスタンティーヌ、堀内久美子訳、ポプラ社)

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 家族、恋人、若さ、健康、財産……生きる上で、失いたくないものは人それぞれだ。そんな、失いたくない何かをなくしたところから始まる日々を、ユーモラスに描いた小説、『何度でも、おかえりを言おう』。

 頑固な性格が災いしてかわいい孫と離れて暮らすことになり、70歳にして初めて1人ではどうにもできない寂しさを覚えたフェルディナン。孫の言葉をきっかけに、それまで顔見知りにすぎなかった隣家の女性を助けたことで、周りの人々と新たな関わりを結び始める。妻に先立たれて無気力になった男、親戚に財産を狙われる老姉妹など、フェルディナンのもとに個性的だがひと癖ある面々が少しずつ集まりだし、自称「じじばば連合」として共同生活を送るようになる。次第に若者たちもうまく巻き込み、老若男女が入り混じる疑似家族の形を成していく。

 大事なものを失ったまま一歩も動けず孤独だった登場人物たちが、ほかの人を助けることで、知らず知らずのうちに自分の人生を動かせるようになっていく。足りないものばかりの人生をお互いに不器用に補い合うことで元気を取り戻していく“じじばば連合”の日々は、ドタバタコメディーのように見えながらも、優しさと希望に満ちている。

■『あの家に暮らす四人の女』(三浦しをん、中央公論新社)

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 子どもから老人まで老若男女が登場する『何度でも、おかえりを言おう』とは異なり、『あの家に暮らす四人の女』は、アラサーから60代まで、一組の親子と血のつながっていない女性の4人(+α)が、ふとしたきっかけで家族のように共同生活を送る小説。

 杉並区に建つ古びた洋館には、生まれたときから一度も働いたことのない女主人・鶴代、その娘で刺繍作家を営む佐知、佐知と同じ年のキャリアウーマン雪乃と、雪乃の後輩・多恵美が住んでいる。ストーカー騒動や淡い恋愛、洋館の“開かずの間”に隠された秘密……とストーリー展開も早いが、本作の醍醐味は、本当に杉並区に実在していそうな彼女らの暮らしの細やかな描写や、気楽にポンポンと会話が続く登場人物たちの関係性にもあるだろう。

 自分がもう立派な中年になっていることにあまり自覚のない佐知、美しいのに異性と1対1の関係を結ばないと決めている雪乃、恋人にお財布扱いされてもあまり気にしていない多恵美、それぞれ恋愛観もキャラクターも違う面々が、夜中にくだらない会話ができるお互いの存在に救われている。

 ところどころに差し込まれる非現実的なファンタジー的エピソードも手伝い、永久には続かなさそうな、幸福な時間を切り取って閉じ込めたような本作。本を開くたびに、自分が洋館の住人の1人のように、その世界観に浸ることができる。

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