介護をめぐる家族・人間模様【第32話】

「死を自然に任せるのも人間のエゴかもしれない」愛犬を看取った女性の自問

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Photo by y_katsuuu from Flickr

 老犬の介護ホームがオープンしたというニュースを読んだ。これまでなかったわけではない。でも、このホームは結構大規模なもののようだ。もちろん費用も。犬の寿命も延びている。手製の車いすのようなものに乗って散歩している犬も見かける。高齢の犬の介護をどうするか、不安に思っている飼い主も多いと思う。ということで今回は、人間ではなく犬の介護をめぐる人間模様(ややこしい)を。

<登場人物プロフィール>
原 公子(46)中部地方に、夫、息子2人と暮らす

■ロンのいない生活は考えられない

 原さんの愛犬は秋田犬だ。名前はロン。10歳になるオス。人間でいえば75歳くらいの老犬だ。秋田犬は、忠犬ハチ公がそうだったように、主人に忠実だ(余談だが、ハチ公が主人を待ち続けたのは、おこぼれに預かっていた焼き鳥目当てだったらしい)。性格は温厚、体重は40キロほど。まるで犬図鑑のような説明になってしまった。

 人間の紹介が後回しになってしまった。ロンのほかの家族は、夫と2人の息子。夫は上場企業の管理職をしていたが、数年前に友人たちと起業すると言って突然会社を辞めた。しかし事業はうまくいかず、今は1人である健康食品を通信販売する会社を始めたところだ。長男は大学を中退して、アルバイトを転々としている。動物好きな次男は、獣医を目指して二浪中……。夫の事業はまだ軌道に乗っておらず、家計はかなり苦しいという。

「今はずいぶん慣れましたが、一番ストレスなのがお昼の用意ですね。ささいなことで恥ずかしいですが。主人は自宅で仕事をしていますし、長男はお昼頃起きてきます。次男は今年から予備校に通うのをやめて自宅で勉強しているので、みんな家でお昼を食べるんです。私は午後1時までパートに行っているので、それからみんなのご飯を用意していたんですが、もうやってられないと思って、お昼は各自で作ってもらうように宣言したんです。これまでずっといいお母さんをやってきたので、みんなびっくりしたみたいですけどね」

 確かに主婦じゃないとそのつらさはわからないだろう。加えて大型犬の世話。原さんの大変さは想像に余りある。

「逆ですよ。ロンがいるから、私は今の生活の不安を忘れることができるんです。ロンは私の抱えている思いを全部黙って飲み込んでくれている。ロンがいない生活は考えられなかったですね」

■十分看病したという自己満足?

 そんなある日、原さんはロンが後ろ足を引きずって歩いているのに気づいた。

「あれ? とは思ったのですが、気のせいかなと。しばらくたってもやはり引きずっているし、触ってみると痛そうに鳴くんです。獣医さんのところに連れて行くと、もうすでに病気はかなり進行していて、すぐに足を切断しないといけないと言われました。骨肉腫だったんです。でも、もう肺にも転移していて、余命は半年だと言われました」

 大型犬は、骨肉腫になりやすいそうだ。しかも急速に進行する。原さんは、どうしてもっと早く発見してあげられなかったのかと悔やんだが、もうどうしようもなかった。

「体が大きいので、足を切断してしまうと自力では歩けないし、私が抱えることもできません。足に通す肩掛けのついたベルトのようなものを作って、私と息子が2人がかりで担いで散歩に連れて行きました。排泄を外でしかしない子だったので、どうしても外に連れていかないといけなかったんです。息子たちが家にいることが多かったのは助かりましたね。このために神様がそうさせてくれたんじゃないかと思ったくらい(笑)。子どもたちもロンのためによくやってくれて、わが子ながら見直しました」

 それまで子育てに失敗したと思っていたという原さんだが、ロンをかわいがってくれる息子たちの姿にそれで十分だとさえ思えたという。

「主人もそう。みんな、ロンを家族として十分すぎる愛情を注いでくれたと感謝しています。足を切ってもしばらくはまだ元気だったので、2人で担ぎながら散歩もできました。でも肺に転移していたので、まもなくほとんど寝たきりになってしまいました。人間のように床ずれもできるので、その手当ても頻繁にしないといけませんでした。最期の1カ月くらいは夜も皆で交代で傍について眠るようにしました」

それでも自分の決意と気持ちを信じるしかない

しぃちゃん

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