[連載] ドルショック竹下の「ヤリきれない話」

グッバイ、私のプライバシー……フェティッシュイベントで露わになった●●

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(C) ドルショック竹下

 親愛なる読者の皆さまは、「フェティッシュイベント」なるものをご存知だろうか。フェティッシュイベントとは、様々な性的嗜好を持つ者が集い、SMボンデージやラバースーツ、コスプレなどのフェティッシュ・ファッションに身を包んだり(或いは具を露出したり)、緊縛やストリップ、キャットファイトのショーに興じたりして交流、情報交換がはかられる催しである。国内では毎月第一土曜の夜に行われる「D」というイベントが最も有名で、近頃では性的倒錯者のみならず、アートやサブカルに傾倒した若者や外国人観光客も訪れ、まさに「変態どものコミケ」といった様相を呈している。

「竹下、お前『D』って行ったことあるか? 俺、一度行ってみたいんだよね」

 2年前の春、突然K氏は言った。K氏は40代前半の大手出版社編集者で、シャツのボタンをやや開けすぎる感のある「ちょいワル」気取りの中年男性である。以前、私は至極まっとうでピースフルな某雑誌のライターをやっており、その担当編集がK氏であった。「ロハス」「ダッチオーブン」「焚き火でほっこり」といったキーワードが表紙に踊るような雑誌の編集である彼が、なにゆえフェティッシュイベントに興味を持ったのかは不明である。だが長らくエリート街道を歩むK氏も、時には寄り道してみたいと思うことがあるのだろう。

 我々は深夜の鶯谷で待ち合わせをし、イベントの開催されるホールへと向かったのである。さて、入口付近には思い思いのフェティッシュ・ルックで決めたお客たちが列をなしている。このイベントでは「フェティッシュな服装で来ると割引」という制度があるため、そういった格好をしてくる者が多い。かくいう私も、割安料金で入るため【全裸の上に蛍光ピンクのロングパーカーのみ】という服装でこの場に臨んでいた。

 会場に入ると、舞台ではいかがわしげなパフォーマンスが行われていた。入場前は緊張気味だったK氏も期待通りの雰囲気にご満悦の様子。場内を一回りした後は私もお役御免ということで、各々別行動となった。数時間後。喫煙スペースで休憩していた私は、背後から声をかけられた。

「Hey,you」

 くぐもった野太い声に驚いて振り向くと、そこには身長185cmはあろうかという黒人男性が立ちはだかっていた。筋骨隆々な肉体を黒いボンデージで固めた姿はド迫力。そんな彼が黒光りした極太のディルド(男性自身を模した玩具)を掲げたとあっては、さすがの私も貞操の危機を察せずにはいられなかった。アイムソーリー、アイアム、アイアンメイデン……そんな断りの文句を脳内でシミュレーションしていると

「スパンキング、OK?」

 そう言って、ブラックメンはディルドを私に手渡し、筋肉がブリッブリに発達した尻を向けてきた。スパンキング、すなわち「尻を叩け」というのである。しかも、尻穴にディルドを突き刺した上で……。こうなったら仕方がない。サービス精神旺盛な私は、ディルドの先端を彼の菊門にグリグリと押し当てる。

「オゥ、オッオーウ」

 悦びの声を上げるブラックメン。私はハードゲイになった気分で、黒褐色の尻たぶを一発叩いた。

「アーオゥ!」

 瞬間、大量の快楽物質が脳内に放出されたように感じた。自分はMとばかり思っていたが、奉仕(サービス)という意味ではSもイケるのかもしれない。一発、また一発と尻を叩く私。そのたびによがり声が上がるため、なんだかブラックメンが打楽器のように思えてきた。徐々に昂揚するテンションが目立ってきたのか、いつの間にか私たちの周りには人垣ができ、カメラのフラッシュが焚かれるまでになった。

 こうなるといよいよ絶好調である。MAXに調子に乗った私は、脚を高く上げ、ブーツのヒールをブラックメンの尻に突き立て、手のひらで猛烈な打撃を繰り出した。ブラックメンも絶頂が近いのか、尻がヒクヒクと痙攣を始めたその時、私はある重要なことに気がついた。

(私、パンツはいてない…!)

 そうである。先に述べたように、私は入場料を割引してもらうため、【ロングパーカーの下は全裸】という出で立ちだったのだ。それなのに、ブラックメンの尻にヒールを突き立てるべく脚を大股開きにしたため、アソコが全開となっていたのである。時すでに遅し。何台ものカメラに私のもみじまんじゅうは収められている。特に、外国からの旅行客と思われる人々はかぶりつきで撮影しており、数日後にはフェイスブックやブログを通じて私のもみじまんじゅうが全世界に発信されてしまうかもしれない。グッバイ、私のプライバシー……諸行無常の念でフラッシュを焚く群集を眺めていると、その中にK氏を見つけた。「お前、何撮ってんだよ!」と突っ込みたい気持ちがこみ上げたが、新発売のダッチオーブンを見るよりも真剣にファインダーを覗くその姿に、私はもう何も言えなくなってしまった……。

――その後も数度、K氏と会う機会はあったが、とうとう「あの時の写真、どうしました?」と聞けずに2年の歳月が流れてしまった。今も、彼のハードディスクには私のもみじまんじゅうが収蔵されているのだろうか。

ドルショック竹下(どるしょっく・たけした)
体験漫画家。『エロス番外地』(「漫画実話ナックルズ」/ミリオン出版)、『おとなり裁判ショー!!』(「ご近所スキャンダル」/竹書房)好評連載中。近著に「セックス・ダイエット」(ミリオン出版)。

『編集者という病い』

大手の男性編集者にまっとうな性癖の奴はいない!

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