【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

秋篠宮家、なぜ33億円の財源がハッキリしない? “金遣い”バッシングが異常なわけ 

2023/10/21 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)
(C)gettyimages

 「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます! 今回は皇族のお屋敷にかかる金額事情をお話いただきます。

――秋篠宮家は、平成2年(1990年)には木造住宅の3LDK+S(サービスルーム)というかなり小さな邸宅にお住まいでしたが、その後、子ども部屋などを増築してから引っ越しなさっておられるのですね。

堀江宏樹(以下、堀江) はい。そこから平成12年(2000年)3月に、昭和47年(1972年)に建てられた旧秩父宮邸を6億5000万円かけ、私室部分を増築されたのです。これが「旧秋篠宮邸」です。

――ここでは19年ほど暮らしていたものの、その後また「御仮寓所」へ引っ越しをなさっています。

堀江 その背景には、平成18年(06年)に悠仁親王がご誕生なさったことがあります。皇太子家(当時)には平成13年(01年)、愛子内親王がご誕生でしたが、内親王は「女帝」を認めない現行の「皇室典範」では天皇に即位することはできません。

 よって、秋篠宮家が次の天皇家になることが決定し、秋篠宮さまのために「立皇嗣の礼」などの一連の儀式が執り行われ、ご一家にもふさわしい新居が模索されるようになって、「新秋篠宮邸」の大規模な改修工事が行われたわけですね。大工事中の数年を暮らすための仮住まいのお屋敷として、「御仮寓所」を9億8000万円かけて新築しました。

――「新秋篠宮邸」は「旧秋篠宮邸」と隣接していた「赤坂東邸」という建物までを併合し、リフォームされることになっていたんですよね。そしてその工事に現時点までで33億円以上がかかっているという。

堀江 そこに「御仮寓所」の建設費を加えると総額が45億円ということです。

――改めてここ最近になって、秋篠宮さまが名実ともに「庶民派」を卒業なさったというしかない巨額を、お住まいに投入されはじめたことがわかりますね。

堀江 批判の矛先は、これらの工事の財源がハッキリしないことにも向けられています。現時点で、宮内庁が公表していないのです。これには、昭和22年(1947年)に制定された「皇室経済法」にある、要約すると「皇室は一部の例外を除き、私有財産を持たなくなった」という側面が関わっているような気がしています。

 ただ、これはタテマエですよね。昭和天皇が崩御したときの個人資産が18億7000万円で、現・上皇さまは、4億2800万円を相続税として支払って相続なさったことが知られています(奥野修司『極秘資料は語る 皇室財産』文藝春秋)。秋篠宮家にもご家族ごとに多額の皇族費が支給され、使い切らなかったぶんは貯蓄されているのではないでしょうか。それらが資金として投入されている気がします。

――かつては小室眞子さんの生活資金にも過去に支給された皇族費が貯蓄され、それが用いられたのではないかと推測され、批判を受けていたことが思い出されます。

堀江 皇族費はただの給与ではない! という考え方ですね。それも「皇室は一部の例外を除き、私有財産を持たなくなった」というタテマエが厳然としてあるからでしょう。宮内庁もそういう秋篠宮家の貯蓄が、秋篠宮邸の莫大な改修費の資金源の一部になっているとは明言しにくいのかもしれませんね。まぁ、これらは私の推測に過ぎませんけれど。

――あらためて「新秋篠宮邸」に33億円+αの巨額が投入されたという事実は、歴史的に見るとどのように評価すべきなのでしょうか?

堀江 戦前にくらべれば、かなり縮小されてはいます。それは宮家、ひいては宮内庁の節約意識の表れだとも確かにいえるのです。しかし、それでも現代日本の庶民の経済感覚を上回りすぎている額なのは否めません。しかも新築ではなく、改修費だけでも何億、何十億円の御殿ですから、「ぜい沢では?」という不満がよけいに噴出するのでしょう。しかし、秋篠宮家は「運が悪い」とも思ってしまうのですよね。日本の経済状況がよければ、ここまで叩かれることもなかったかもしれませんから。

――宮内庁の発表によると、秋篠宮さまご夫妻は、国民感情に配慮し、新邸の工事については経費削減を心がけていたといいますよね。

堀江 宮内庁としては、平成初期の「皇居・御所」の改修費56億円(現在の70億円程度)という「先例」を考慮せずにはいられず、将来の天皇家を継ぐべき「皇嗣」となられた秋篠宮さまの宮邸を33億円にしただけでもかなり節約したのですよ、と声を大にして言いたいのかもしれません。

 この「33億円」が批判されるべき数字なら、秋篠宮さまご一家より、むしろ宮内庁のお役人の経済感覚が、庶民とズレてしまっていることが一番の問題のような気がするんですね。

――庶民はなるべくお金はかけずに、それでいて皇族の方々には大邸宅に住んでいただきたいと言っているのに等しいですね。

堀江 そうです。これは本当に実現困難なリクエストです。今年、つまり令和5年(2023年)は、東京23区の新築分譲マンション一戸の平均価格が1億円を突破しました。新秋篠宮邸の改修費用が33億円以上かかったという数字だけが独り歩きしていますが、本来ならば、最近の不動産事情も加味して、総合的に考えるべきとは思うのですが……。

 しかし、一番の問題は、秋篠宮家全体がバッシングされていることでしょう。一昔前までは、皇族がたの“金遣い”を週刊誌などが批判する場合、妃殿下が矢面に立たされました。しかし、今回は紀子さまだけでなく、「皇嗣」という重要なポジションにある秋篠宮さま、ひいては秋篠宮家全体が公然と批判されている点が異常です。皇室は新たなる危機の時代に突入しているのかもしれません。今後も注意してこの問題を見守っていきたいですね。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

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Twitter:@horiehiroki

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最終更新:2023/10/21 17:00
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