因縁や陰謀がうわさされる

ダイアナ元妃の没後26周年に……「因縁を感じる」 事故死した恋人の父死去

2023/09/05 21:04
堀川樹里(ライター)
ダイアナ元妃の没後26周年に……「因縁を感じる」 事故死した恋人の父死去の画像1
パパラッチの追跡を逃れよう事故に遭い亡くなったダイアナ元妃(写真/Getty Imagesより)

 8月31日のダイアナ元妃没後26周年の前日、元妃と共にパリで事故死したドディ・アルファイドの父親モハメド・アルファイドが死去した。享年94。遺族は「老衰死で安らかに最期を迎えた」と発表。葬儀は9月1日に執り行われ、ドディの横に埋葬されたと伝えられている。

 Netflixの人気ドラマ『ザ・クラウン』シーズン5にも登場した億万長者のエジプト人実業家で、ダイアナ元妃のよき理解者だったモハメド。元国王エドワード8世が亡くなるまで仕えた執事を雇うなど、イギリス王室と縁があった人物だが、息子とダイアナ元妃の死後は「事故は王族が仕組んだ陰謀」だと繰り返し主張し、敵視した。

 『ザ・クラウン』シーズン5のベストエピソードだと評判の「モーモーと呼ばれた男」で、イギリス上流階級に憧れを持つやりチャーミングな実業家として描かれたモハメド。イギリスの老舗百貨店ハロッズの元経営者で、サッカーチームのフラムFCやホテル・リッツ・パリの元オーナーとして事業を手広く展開。ダイアナ元妃と仲が良く、王室のしきたりやパパラッチに悩む彼女のことを何かと気にかけていたと伝えられている。

 モハメドの長男ドディはエジプトで生まれ、ウィリアム王子やヘンリー王子も通ったイギリスのサンドハースト王立陸軍士官学校を卒業。軍で働いた後、映画界で働くようになり、アカデミー賞受賞作『炎のランナー』(1981)の製作総指揮を務めるなど実績を残した。ハンサムな御曹司として知られ、ジュリア・ロバーツやブルック・シールズなどハリウッド女優とも浮名を流している。

 ドディは97年の夏、モハメドに誘われ子どもたちを連れて南仏へバケーションに訪れていたダイアナ元妃と意気投合し、恋仲になった。ドディもバツイチで、ダイアナ元妃との熱愛報道が流れるようになると、婚約者なる別の女性から訴えられ、大騒ぎに。ダイアナ元妃も2年間交際していたパキスタン系の外科医師と別れてドディに乗り換えたとゴシップされ、タブロイドの格好のネタになった。

 2人はパパラッチの標的になり、地中海クルーズ中に船上でキスしている写真は600万ドル(約8億7,000万円)で買い取られ、「最高額のパパラッチ写真」となった。

 モハメドは前述の「モーモーと呼ばれた男」で描かれているように、愛のためにイギリス王室を離脱した元国王エドワード8世が亡くなるまで仕えた執事を自分の執事として迎え入れ、イギリス上流階級のしきたり直接教わるなど、王室に憧れを抱いていたと伝えられている。ダイアナ元妃とドディの交際についても大喜びで、2人が結ばれることに大賛成だった。

 しかし、王室は金に物を言わせてイギリスの老舗デパートのオーナーになったイスラム教徒のモハメドを快く思っておらず、その息子であるイスラム教徒のドディと、将来君主になるウィリアム王子の母ダイアナ元妃との交際に大反対していたとされている。

 また、君主にイスラム教徒の継父ができること、エジプト人の血を引く異父弟ができることも懸念していたとうわさされ、トニー・ブレア首相(当時)も回顧録に「2人のロマンスにはいろいろな問題があると提言した」と記しており、2人の交際には反対派が多かった。

ダイアナ元妃の事故死をめぐり、陰謀説を繰り返し主張

 ダイアナ元妃とドディは97年8月31日、フランスのパリで乗ったリムジンの運転手が、パパラッチの追跡を逃れようと猛スピードを出してトンネルに突入した際、ハンドル操作を誤って壁に激突する事故を起こし、亡くなった。

 ドディの遺体はモハメドが引き取り、ロンドン中心部にあるモスクで葬儀を執り行った。その後、モハメドが所有する土地に霊廟をつくり埋葬。17年に受けた取材で、モハメドは霊廟を毎日のように訪れて「息子と話をしている」と語り、ロンドンのパークレーンにあるドディのフラットの中も「亡くなった時のままにしてある」と明かした。

 その後05年にはハロッズの店内にダイアナ元妃とドディのブロンズ像を設置するなど、友人たちから「息子はもちろんのこと、ダイアナ元妃の死も乗り越えられないのだろう」と心配されていたモハメドだったが、事故の翌年から「事故はエディンバラ公ら王族が仕組んだもので、王族から指示を受けたMI6が実行したものだ」という陰謀説を繰り返し主張。ダイアナ元妃がドディの赤ん坊を身ごもっていた説なども唱え、真相を明かすことをライフワークとするようになった。

 しかし、フランスの裁判所で行われた調査では陰謀説は否定され、06年にロンドン警視庁も「陰謀説を立証するものは見つからず、第三者は関与していない」という捜査結果を発表。08年には、原因不明の死を調査するイギリスの死因審問も「事故は重大な過失運転によるもの」とする陪審の裁定を下した。

 しかしモハメドは、以降も陰謀説を支持するドキュメンタリー映画『Unlawful Killing』(11)の製作費を援助するなど、王族が2人を殺したと信じ続けたようだ。

 長寿を全うしたモハメドだが、亡くなった日がダイアナ元妃とドディの事故死から26年を迎える前日の8月30日だったことから、ネット上では「因縁を感じる」という声が続出している。恐らく亡くなる瞬間まで陰謀説を信じていただろうモハメドが、ファイナルシーズンである『ザ・クラウン』シーズン6でどう描かれるだろうか?

堀川樹里(ライター)

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2023/09/05 21:04
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