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『鬼滅』『SLAM DUNK』『マリオ』……興収100億超えアニメ映画続出も、声優の厳しいギャラ事情

2023/07/02 21:00
勅使河原みなみ(ライター)
マリオとルイージの画像
Getty Imagesより

 近年、アニメ映画の興行成績が好調だ。2020年10月公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が叩き出した興行収入404.3億円(興行通信社調べ、以下同)という大記録には及ばないものの、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(21年3月、102.8億円)、『劇場版 呪術廻戦 0』(同12月、138億円)、『ONE PIECE FILM RED』(22年8月、197.1億円)、『すずめの戸締まり』(同11月、147.9億円)、『THE FIRST SLAM DUNK』(同12月、146.7億円)、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(23年4月、131.2億円)といったように、毎年100億円超えの作品が誕生している。

 その勢いは国内アニメ作品だけにとどまらない。任天堂の世界的人気ゲーム『スーパーマリオ』を、同社と『ミニオンズ』『SING/シング』シリーズのイルミネーションが共同制作でアニメ映画化した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(今年4月公開)は、公開31日で興行収入100億円を記録。日本での洋画アニメ史上最速で100億円を突破した。

 なお、同作は6月26日発表の最新「国内映画ランキング」(6月23~25日)でも2位にランクインしており、累計興収123億円を超える大ヒットを飛ばしている。

声優陣に配られる「大入り袋」の平均は……?

 日本のアニメ作品における声優のギャラは、「日本俳優連合」が定める“ランク制度”に準じており、キャリアを重ねてランクが上がるにつれて、ギャラも高くなっていくことでおなじみ。しかし、『マリオ』のような海外作品や、興収100億円を突破するような超大作でも、このルールが適用されるのだろうか。業界関係者は以下のように語る。

「基本的に『外画(外国映画)』は、国内作品同様に、声優のランクで決められた出演料のみ支払われます。ディズニーなどの有名な海外作品の場合でも、まずは声優事務所にオーディションの案内が来て、合格すれば役が与えられ、ランクに乗っ取ったギャラが支払われる……という流れです」(声優業界関係者)

 一方、映画が大ヒットした場合は、出演者に「大入り袋」が出ることもあるというが、「中身は平均して500円。近頃、興収100億円を突破した某作品は5,000円だった」(同)とか。

「最低ランクに位置する声優の場合、アニメ映画1本に出演すると、ギャラは20万円前後。映画がどれだけヒットしても、それ以上実入りがないというのは、キャストにとって残念なことですが、長年そのルールでやってきたので、みんな『致し方ない』と諦めていると思います。ちなみに作品のアフレコは、収録に1日、予備にもう1日拘束されます。1日の収録で済んだ場合、予備日はバラシとなるものの、直前の対応となるため、予備日に急きょほかの仕事を入れることはほぼ不可能。そのため、予備日の収入はゼロとなってしまう。ただ、テレビアニメ1本の出演料と比較すると、ギャラはいいですから、やはり映画仕事は『おいしい』といえるでしょう」(同)

アニメ映画がヒットすると「舞台あいさつ」でギャラが発生

 また、映画がヒットした場合は「“出演料以外”のギャラが発生する場合がある」(同)という。

「各所で行われる舞台あいさつです。ギャラはピンキリだと思いますが、映画1本のアフレコに費やす時間よりも、舞台あいさつイベントに出演する時間のほうがはるかに短いですし、その内容も、映画について共演者とトークし、お客様を盛り上げて帰るだけなので楽ですよね」(同)

 アニメ映画が大ヒットしても、声優の懐事情は意外にもそれほど潤わないというが、このルールは今後も変わらないのかもしれない。

勅使河原みなみ(ライター)

独自に集めた情報をもとに、声優に関する記事を執筆しているライター。好きな食べ物は浸し豆。

最終更新:2023/07/02 21:06
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