コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

叶姉妹の人生相談が「人を傷つけない」ワケ――ポスト瀬戸内寂聴としての腕前

2022/07/21 21:00
仁科友里(ライター)

 繰り返しになるが、叶姉妹は言葉をかみ砕いて説明しないので、責任や覚悟が具体的に何を指しているのかはわからない。なので、単なる私の推測になってしまうが、先ほど例に出した「自己肯定感高く、ポジティブに生きるコツは?」というお悩みに対する、恭子サンの回答の意味について考えてみよう。

 「人からどんなふうに見られているかを気にしない」ことは、仮に他人が自分を高く評価していなかったとしても、その評価に縛られない自由の行使と言えるだろう。しかし、そういう生き方をして、人との距離を縮めないようにしていると、職場でなんとなく浮いてしまう可能性がないとは言えないし、上司によってはウケが悪いこともあるので、そのあたりを受け入れる覚悟はいる。

 また、職場で浮いていると、なんとなく疎外感を覚えて、ネガティブになってしまうかもしれない。会社というのは本来、給料に見合った働きをする場所なので、メンタル面で仕事に悪影響を及ぼすのはNGだろう。しかし、仕事の責任を全うする働きをするのなら、誰にも迷惑はかけないわけだから、その態度を貫けばよい。叶姉妹の意図するところはこんなことではないだろうか。

 こうやって考えていくと、叶姉妹の言う“自由”とは、自分本位のものではなく、自分のやるべきこと(仕事)をやった上で堂々と行使するものであり、自分と周囲(職場)、どちらにも恩恵をもたらすものと言える。繰り返すが、これは私の単なる推測にすぎないが、少なくとも叶姉妹は「自分本位でいい」とは言っていないように感じるのだ。

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