コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

西野亮廣のオンラインサロン会員になっても……「夢をかなえることは難しい」と思ってしまうワケ

2021/01/21 21:00
仁科友里(ライター)

 「やりたいことがない」のは、「今の生活に不満はない」ということだから、十分幸せであるといえるだろう。それなら、何も無理に「やりたいこと」なんて探す必要はない。「やりたいことがある」というのは一種の飢餓状態で、「才能を持て余している」「大いなる欲求不満」「もう後がないので、やるしかない」くらい追い詰められていることと紙一重ではないか。

 例えば、インドネシア建国の父、スカルノ大統領の第3夫人だったデヴィ夫人。彼女は極貧家庭の出身である。『デヴィ・スカルノ自伝』(文藝春秋)で、夫人は当時を「地獄のような状態」「貧乏の恥ずかしさが、どこまでも追いかけてきた」と振り返っている。

 夫人は幼い頃、お父さんと銭湯に行った帰りに空を見て、自分は「どこか遠い遠い国に行くだろう」と予感していたそうだ。神からの啓示のようにつづられていたが、この現実から抜け出したい、ここではないどこかに行きたいという強い思いが、夫人にそう思わせた部分もあるのではないだろうか。

 スカルノ大統領が夫人の若さ、美しさに心ひかれたことは確かだろうし、あの時代に、夫人が熱心に英語を学んでいたことが功を奏したことは間違いないはず。しかし、それ以上に、食べるものにも事欠き、数々の侮辱を受けて育ったことで培われた尋常ではないデヴィ夫人のガッツが、このロマンスの決め手になったと思えてならない。A氏には、そんな耐えられないほどの不満があるのだろうか。

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