コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

「自傷行為をするようになった母」父が亡くなって12年、積み重なる違和感は「年を取ったから」だと考えていた息子

2020/11/22 18:00
坂口鈴香(ライター)

 母親と同居することに関して、妻は「仕方ないよね」と納得してくれたが、大変だったのは食事だった。当時、中高生の娘がいて、母親とは好みが合わなかったということもあるが、母親自身にも認知症の影響は現れていた。

「母は昔、飲食店を経営していたこともあるくらい料理上手だったんですが、母が作ってくれる料理の味付けが明らかにおかしくなったんです。塩とか砂糖とか、調味料の量が多すぎる。料理のカンみたいなものがなくなったようでした」

 母親の症状は少しずつ悪化していった。長年住んでいた家から引っ越したとはいえ、近距離だったのでそう大きく環境が変わったわけではなかったが、土地勘がないせいか、外出して帰れなくなることが増えたり、感情を制御できなくなって怒りっぽくなったりした。

 鷲津さんも妻も働いていて、娘たちも学校に行くと、昼間は母親一人になる。

「デイサービスには週に2日行っていましたが、だんだん一人で家にいさせるのが危なくなってきました。火の始末も不安だったし、何より、母がノイローゼのようになって自傷行為をするようになったんです」

 ケアマネジャーに相談すると、施設に入れた方がいいのではないかと助言された。

――続きは11月29日公開

 

 

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/11/22 18:00
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