『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』人の死を待つ移植待機患者の葛藤「私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~ 前編」

2020/11/16 17:22
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月15日は「私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~ 前編」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』公式サイトより

あらすじ

 難病により心臓移植を待つ2人と、その家族に焦点を当てた回。

 容子51歳(取材時、2018年時)は42歳の時に心臓が肥大化し、血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下してしまう原因不明の難病、拡張型心筋症を発症する。悪化すると心臓移植しか手段がない。容子は補助人工心臓(VAD、通称バド)の入ったリュックを常にしょいながら心臓移植を待つ日々を送る。

 容子はもともと夫と息子、娘と暮らしていた。しかしVADの機械トラブル時に介助者が対応できるよう、現在はVADの研修を受けた両親とともに実家で暮らしている。容子は心臓移植について「亡くなった人の命をもらうという、そういうところでの葛藤というのは全く考えない人はいないと思うんだよね。その人の命を自分は……、亡くなるドナーが出るのを待っているのか……」と番組スタッフに思いを話す。

 容子と同じ拡張型心筋症で、患者会で交流を続ける平澤弘章(当時41歳)は、VADをつけた生活が2年半になる。平澤の妻・友子は、平澤の病気を知ったうえで結婚した。友子は「(知り合いの家族が言っていたが、VADをつけて)2年くらいは皆さん元気なんですって。なにごともなく。でも3年目からいろいろ出てくるらしくて」と胸中を話す。なお、心臓移植の平均待機年数は現在約6~8年という。

 平澤は、VADの刺入部(体にケーブルが刺さっている部分)からさまざまな菌に感染してしまい、入院生活が長引く。もともと平澤と友子は2人で暮らしていたが、平澤がVADをつけてからは平澤の両親と同居している。しかし平澤が入院することも多く不在がちの生活で、友子と義両親の折り合いが悪くなり、友子は実家に戻る。退院に望みをかける平澤はVADの交換手術を受けるが、10時間の手術の後、3日たっても目覚めない。

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