コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

父が行方不明になって警察へーー「今どこにいるかわからない」逆探知でようやく見つけた姿は……

2020/09/27 18:00
坂口鈴香(ライター)

 それでも、義徳さんは免許証を返納していたので、出かける手段が自転車や徒歩しかないというのがまだ幸いだった。家族が免許を返納させたのは、賢明な判断だったといえるだろう。とはいえ、若い頃から車とバイクが趣味だった義徳さんにとって、免許返納はどうしても納得できないことだった。

「それは抵抗していました。それを見て、祖母も自分の息子がかわいそうになったようで、『免許を取り上げるな。好きなことをさせてやれ』と反対してきたんです。そのうえ私たちが仕事でいない日中、父を連れ出して運転させていたこともあったんです。そんなことも一因になり、今は祖母との縁を切りました」

 もしものことがあったらどうしようと、家族は常にヒヤヒヤしていたと明かす。麻美さん家族は何度も義徳さんを説得し、免許センターの人からも強く言ってもらい、ようやく返納できたという。

「返納したあとも、免許証はどこだとしつこく言っていましたが、話を逸らすうちに忘れていきました」

 祖母もいわば敵。周囲から責められるなか、介護サービスや施設を利用できず、典子さんが追いつめられてもおかしくない。自治体には相談しなかったのだろうか?

「しました。が、期待にはこたえてくれませんでした。唯一のアドバイスが『ご近所に病気のことを話して、わかってもらいましょう』と。それで、母がご近所に病気のことを話しても、理解してくれるどころか、逆に怒られたと言っていました」

 施設も探した。資料を取り寄せたが、料金が高すぎたり、義徳さんが自由に動けるからと断られたりしたという。

――続きは10月3日公開

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/09/27 18:00
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