『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』著者・巣内尚子さんインタビュー(後編)

『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(後編)――日本の「移民」問題

2019/11/01 15:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

身近な外国人に優しさとリスペクトを

――そんな日本に来たいと思う人はいませんね。英金融大手HSBCホールディングスが毎年行う各国の駐在員の「働きたい国ランキング」では、日本は調査可能な33カ国(地域含む)のうち32位とワースト2位になったことが報じられています。賃金と労働時間、子育てのしやすさが最下位と、今の日本の問題がそのまま指摘される形となりました。このままでは、日本に誰も来なくなってしまいます。

巣内 たしかに今のままでは、日本で働くこと、暮らすことをネガティブにとらえる人は増えるのではないでしょうか。ベトナムは「フェイスブック大国」でもあり、日本の技能実習生や留学生が抱える課題はSNSを通じてベトナム側にも知らされつつあると思います。またベトナム人の移住労働先には台湾や韓国もあるわけですから、そちらのほうがいいとなれば、日本に来る理由がなくなるのではないかと思います。

――日本は、どうすればいいのでしょうか?

巣内 問題が多い技能実習制度を廃止し、仲介組織を排除することが必要だと思います。その上で、外国人をきちんとした労働者として受け入れ、転職の自由を認めることをはじめ、労働者としての権利保護を進めるとともに、定着に向けた仕組みを整備する必要があります。

 特に、受け入れに当たり、労働者の相談窓口の整備を進めるなど、支援体制を強化する必要があります。7月後半から2カ月ほど台湾で移住労働者の調査をしたのですが、台湾には移住労働者が無料で相談できる公的なホットライン「1955」があります。このホットラインは1年中、24時間運営されており、日中就労している移住労働者も夜間や休日に相談できます。タイ語、インドネシア語、ベトナム語、英語、中国語などの多言語対応ですので、移住労働者は母語での相談が可能です。台湾の移住労働者受け入れにも課題が多く、搾取や虐待の被害に遭う人が後を絶ちませんが、それでも公的相談窓口があることで、相談はしやすくなっています。ホットラインは一例にすぎませんが、公的部門が責任をもって移住労働者の支援体制を整えることが急務です。

 もう一つ私たちができることは、社会との連帯です。例えば、労働者が一人で戦うのは容易ではありませんので、外国人労働者が組織化して戦えるような状況が生まれることが期待されます。例えば日本では、移住労働者の権利のための行動 「マーチ・イン・マーチ March in March」が毎年実施されています。こうした運動は外国人だけではなく、日本人労働者にも必要ですよね。連帯できるところで、つながりを持ち、協力しながら国籍に関係なく、労働者全体の処遇改善を求めて動くことができるのではと思います。

 もし労働運動に参加するのはハードルが高いというのであれば、私たちが日常生活の中で可能なことは、まず外国人労働者の実情を知るということだと思います。技能実習生は日本社会とのつながりが希薄な人もおり、なかなかその実情が知られていないところがまだあると思います。外国人労働者の実情を知ることで、それが投票行動に影響するなどして状況が変わっていくこともあるのではないでしょうか。

 そして、身近な外国人の方と日常生活の中で交流を持つことも大事だと思います。例えば、コンビニエンスストアや飲食店などで働く外国人の方を見かけたとき、あるいは工場などに自転車で通勤する技能実習生を見かけた時には、挨拶をし合ったり、言葉を交わすなどしたりしてみてはいかがでしょうか。そうした小さな交流の中で、もしかしたら、外国出身の方を取り巻く状況や課題が見えてくるかもしれません。

巣内尚子(すない・なおこ)
1981年生まれ。フリージャーナリスト。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。現在はカナダ・ケベック州のラバル大学博士課程に在籍、2015年3月から16年2月まではベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在するなど、国内外で記者、研究者として活動。研究分野は国際社会学と移住現象のジェンダー分析。

最終更新:2019/11/01 15:00
奴隷労働
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