『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』著者・巣内尚子さんインタビュー(後編)

『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(後編)――日本の「移民」問題

2019/11/01 15:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「失踪」ではなく、追い詰められて「逃げた」「避難した」

――だから「失踪」する実習生も多いのですね。2018年には前年から1963人増の9052人が失踪し、政府も問題視しています。

巣内 私は、実習先企業などから実習生が逃げることを「失踪」と呼ぶことには違和感があります。むしろ生命の危険を感じたり、やむにやまれず追い詰められて「逃げた」「避難した」のではないかと考えています。詳しくは本書に書きましたが、私が聞き取りをした実習生たちは、劣悪な労働環境や暴言、暴力、低賃金といった搾取などを受け、悩みぬいた末に、「逃げる」ことを決意していました。

――借金を背負っているのに逃げるのは、よほどのことでしょうね。

巣内 はい。繰り返しになりますが、技能実習生は制度的に在留資格、住まい、仕事が一体化している状況の中、日本で就労・生活していますから、会社から逃げてしまうと、在留資格、住まい、仕事を一度に失うリスクがあります。さらにご指摘のように、借金もあります。それでもわざわざ逃げるということは、その決断に至るまでに、よほどのことがあったのだと考えています。

 ある建設の技能実習生は、日ごろから暴言、暴力を受けていた上、ある日、上司から叱責され、雨の中で立たされたショックで、会社を出ました。この技能実習生は継続する暴言、暴力ですでに疲れ果てていたところ、さらに雨の中で立たされて、耐えられなくなってしまい、あてもなく、会社を出たと話していました。

 朝3時までの長時間労働、残業代未払い、暴言、不衛生な寮での共同生活、外出の制限などの状況を受け、悩み抜いた末に、会社を出た技能実習生もいます。この技能実習生は、休みは月に3日程度、朝8時から翌朝3時までの就労が継続し、体調不良もありましたから、緊急避難といえる状況ですよね。

 技能実習生は来日までに、ベトナム側で数カ月間の来日前研修を受け、さらに正規の手続きを経て来日します。そのために高額の渡航前費用を支払っています。これだけの手間と時間とお金をかけて来日した技能実習生の中に、逃げたくて逃げる人がどれだけいるのでしょうか? 聞き取りをすると、逃げた経験を持つ人はみな、「本当は逃げたくなかった」と答えています。

――そうして逃げた実習生は、国にどう扱われるのですか?

巣内 日本政府は逃げた技能実習生を「失踪者」と呼び、さらにその人たちが就労すれば「不法就労」と位置づけ、取り締まり対象にします。逃げた技能実習生は、拘束、強制送還の対象になりますから、犯罪者のように扱われるわけです。ですが、その人たちが逃げるという決断をした事情を丁寧に見なければいけません。同時に、逃げるという重い選択をさせた技能実習制度の在り方を見なければいけません。

奴隷労働
知れば知るほど厳しい現実

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