『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』有名ニートphaの後継者が抱く“不安と結婚”「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」

2019/10/15 15:50
石徹白未亜

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月13日の放送は「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」。日本一有名なニート・pha(ファ)が、11年運営してきたシェアハウスを解散したその後の生活と、phaに影響を受けた、新しい働き方を模索する「後継者」が紹介された。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 日本一有名なニート、phaは11年間運営してきたシェアハウスを解散し、猫二匹を連れて一人暮らしを始める。一方で、phaに触発された若き「後継者」として、19歳で東京と京都でシェアハウス運営を行う今井ホツマと、開業資金を極力抑えた喫茶店を夫婦で営む25歳の池田達也の働き方が紹介される。

phaの若き後継者二人が結婚に求めたもの

 phaの意志を継ぐ、今井と池田には共通点がある。まず、ほかの就業経験を持たずに最初から事業を始めていることと、そして今井には東京で一緒に暮らす婚約者がいて、池田は妻と子がいるという、今どきの都市部に暮らす男性にしてはずいぶん結婚が早い点だ。

 結婚の理由として、今井は「 身ぐらいは固めとかないとヤバい。土着していかないといけない。あまり(シェアハウス運営に)振れ過ぎるとエネルギーが高くなってしまう。よりしろ(よりどころ)みたいなものが欲しい」と、池田は「 自分のために働きたくなかった。結婚してだれか人のためなら、家族のためなら苦じゃないなと」と話す。

 二人は一見、反対のことを言っているように見えるが、「不安がある」という点は似ている。そんな二人を見ていると、数年間と割り切って、興味がある方面の会社でまず働いてみたら、少し不安は薄まったのではないかとも思ってしまった。

「旧来型の働き方や生き方はもう無理」という危機感は、若い人の方が身に染みているだろう。しかし、「旧来型」を試さず、いきなり「新しい方」を始めるのでは、比較対象を自分の中に持てないために、将来不安がますます強くなってしまうのではないだろうか。

「新しい働き方」を実践する若い二人は、それで生じた不安を「旧来型の生き方」ともいえる結婚で埋めようとしたともいえる。これは皮肉でも悪口でもない。一人の人間の中に、窮屈だが歴史も長く、実践している人も多い、安心感のある「旧来型のやり方」と、自由だが歴史が浅く実践者も少なく、不安のある「新しいやり方」が混在していて、日々それは変化しているのだろう。そして、今井や池田が早くに結婚したように、どこかが新しく突き抜けている人ほど、案外ほかの分野では保守的になるのかもしれない(ただしphaはそういったところも超越していて、あらためて超人だ)。

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