インタビュー

なぜ人身事故をスマホで撮影するのか? 精神科医が、JR新宿駅「異例の放送」の背景を語る

人は根源的に「残忍な欲望」を持つという面も

 一方で、人間には「他人の不幸を見たい」という根源的な欲望があると話す片田氏。フランス革命の頃、大衆の前で、国王や王妃、貴族らがギロチンによって処刑されたが、「それは、大衆の残酷な欲望を満たすため、ある種のガス抜きとして行われていたのではないでしょうか」と語る。

「ローマ詩人・プラウトゥスの『人間は、人間にとって、狼である』という言葉のように、人は心の奥底に、他人を搾取し、攻撃したいという残忍な欲望を秘めているし、『他人の無残な姿』も見たいのです。しかし、20世紀の近代化の流れの中、ギロチン処刑が『野蛮なこと』として、大衆の前で行われなくなったように、経済が発展し、社会が安定することで、人はこうした残忍な欲望を抑圧するようになりました。裏を返せば、いま人身事故の現場をスマホで撮影する人が増えているのは、日本ひいては世界が不安定な中、残忍な欲望を抑圧できなくなってきたということなのではないでしょうか」

 今回の一件では、新宿駅のホームに「お客さまのモラルに問います」というアナウンスが流れたことを踏まえ、「現代の日本人はモラルが低下した」といった指摘が多数見られたが、片田氏いわく「残忍な欲望は根源的なものなので、『現代のモラル低下』とは必ずしも言い切れない」とのこと。

「ただし、テクノロジーの発達によって、誰もがスマホで簡単に写真や動画を撮影できるようになったことが、『モラル低下』を招いたとは言えると思います。また、『世間というもの』が壊れてきていることも、『モラル低下』につながったと言えるのではないでしょうか。昭和の時代は、『世間様に顔向けできない』『世間様に笑われる』という感覚があり、例えば、会社という『世間』に対して『恥ずかしいことはできない』といった自制が利いたのです。しかし、終身雇用制度が崩れている現在、そうした感覚はなくなりつつあるのではないでしょうか。いいか悪いかは別にして、帰属意識もかなり希薄になっています。そのため『何をやってもいいんだ』と考える人が増えているような気がしますね」

 人身事故の現場をスマホで撮影する人たちの出現は、経済・社会の状況と密接に結びついていることがわかったが、JRが“異例の放送”を行ったように、「傍観者」を脱し、声を上げられる人が一人でも増えてゆくことを願いたい。

最終更新:2019/10/11 16:00
他人の意見を聞かない人 / KADOKAWA /  片田珠美 / 出版社 KADOKAWA   ジャンル  新書   著者  片田珠美
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