田房永子・音咲椿対談【後編】

「モンスター母」と「男性中心社会」は無関係じゃない――毒親被害と“男女差”を考える【田房永子×音咲椿対談】

戦後の後遺症と「モンスター母」

音咲 お義母さんは、2人の息子を育てるために離婚できずに我慢するしかない。それで顔のいい息子を頼りにするしかない……?

田房 息子が彼氏か夫か、わからなくなってるというところはあるでしょうね。子どもに性愛的なものが向かうということは「ない」と思っていたけど、日常から「性愛の対象は大人」と意識していなければ「ある」と思う。みんなそこを話さないし、意識していないから、逆に漏れ出てる感じがする。実際的な性的な行為はなくても、精神的に“彼氏の役割”や“夫の役割”をさせてしまう危険性がある。そういうことをもっと母親学級で言っておかないと、子どもたちが大変。虐待という名前がつかない虐待なんだよね。

 実は全部「女性差別」「女性蔑視」の問題なんだよ。うちのお母さんの性格はなんだろうとどんどん考えていくと、そこに行き着いた。戦後、ものすごい暴力を受けた人たちが一斉に現実社会に帰ってきて、めちゃくちゃ暴れたり夜中に叫んだり、あるいは異常な元気のよさで東京タワーを建てたりして、DVは当たり前、女性は25歳までに結婚しなかったら売れ残りのクリスマスケーキと呼ばれるひどい時代。戦争の後遺症と、それを癒やすための風俗文化の異常な発展がいまだに続いていて、令和になったからといって、何もかも急にクリーンになるわけがない。男の人に傷つけられてきた女性たちから“モンスター母”が生まれるのは、無関係じゃない。

『うちの母ってヘンですか?』(田房永子・秋田書店)52ページより引用

音咲 ……私は特に、九州出身というのもあるかもしれないです。父は母に「自分が稼いでくるから、家事育児をしてほしい」と言って、確かに自分は稼いでくるけど浮気したり。母はおそらく祖母(母にとっては姑)や九州独自の男尊女卑精神に呪いをかけられてたんでしょうね。きっと九州の女性は皆そうだと思います。母は、私や姉に「お父さんには絶対冷たいご飯を出しちゃいけない」と呪いをかけてきた。私もいまだにチンしたご飯をお父さんに出しちゃいけないと思うし、夫になる人にも出しちゃいけないと思ってた。今なら「こっちも忙しいんだから、チンでいいだろ」と思うけど。

田房 その九州的マインドは、N親子に呼応したのかもしれないですね。「私が規格外なんじゃないか」と思っちゃうのも、九州マインドのなせる業かもしれない。

音咲 私も田房さんの新刊を読んで、今までになかったお義母さんに対する親近感というか、「救われてほしい」という気持ちが出てきましたね。

田房 「シスターフッド」ってやつだと思う。女性同士のつながり、目に見えない絆みたいなのはやっぱりあるよね。女性同士だと、たいしたこと言うわけでなくても癒やされたり、スッとしたりということがある。男性に2時間どんなに説明してもわからないことが、女性は5秒くらいで「ああ、わかる」という時がある。敵であっても。

音咲 敵なんだけど同胞……義母が。

田房 そう、同胞だよね。

音咲 なぜあの時義母に寝返ったのか、ずっと彼に聞きたかったんです。でも10年たって、「理由は聞かなくていいな」と思えるようになった。

田房 聞いてもしゃべれないと思うよ。まだ“生まれていない”から、羊水で声が出ない。男性に限らず、女性にもそういう人はいる。「進学する」「就職する」「結婚する」と言う度に、母親から「○○が実現したらしてもいい」と無理難題な条件を出されて、なかなか実家を出られないという女性もいます。本人はお母さんの希望通りにしてあげたいからがんばっちゃう。その女性に「どうしたいのか」と聞いても「どうしよう」と言うだけで答えられない。思考するということを母親から消されているんです。それは娘に自立されると母親が不安になるから。消している母親本人の思考も消えている。

音咲 そこで、思考することが消えていない私が来たから、面倒なことになったんですかね。

田房 それもあると思う。「思考を消して私の懐に入りなさい」ということなんだと思う。

音咲 なるほど……。今日はいろいろと自分の中でストンと落ちました。ありがとうございました!

 

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田房永子(たぶさ・えいこ)
1978年東京都生まれ。2000年雑誌「マンガエフ」にて漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。
母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行し、ベストセラーに。主な著書に『ママだって、人間』(河出書房新社)、『呪詛抜きダイエット』(大和書房)、『それでも親子でいなきゃいけないの?』(秋田書店)、『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス)、『キレる私をやめたい〜夫をグーで殴る妻をやめるまで〜』(竹書房)などがある。6月22日に大和書房より『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』を刊行。

音咲椿(おとさき・つばき)
男性向けグラビア誌編集長を経て、ポット出版社刊「女の子×女の子のためのエロチックブック・Carmilla」にてイラスト・漫画家デビュー。
単行本「イケメン外国人たちとベッドで異文化交流した結果。」(ぶんか社刊)好評発売・配信中。
マンガ「『こんな大きいなんて聞いてない!』~外国人と異文化SEX、ヤりまくりました。」「婚約破棄で訴えてやる!~毒親持ち彼氏と167日間壮絶バトル~」配信中。


音咲椿さんの作品『婚約破棄で訴えてやる!』は、電子書籍にてご覧いただけます。
連載中の番外編はこちら

★★★各電子書店にてお買い求めいただけます★★★

renta

最終更新:2019/06/26 17:02
男性社会の呪いだね

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