志村けん『バカ殿』の露骨な性差別ぶり 水着女性を敷いて寝る“肉布団”

2019/01/11 20:10

今月9日放送のバラエティ番組『志村けんのバカ殿様(以下、バカ殿様)』(フジテレビ系)で、水着姿の女性が志村けんの布団になるという映像が放送され、視聴者から非難の声が上がっている。

 同番組のコントのなかで志村演じるバカ殿様は、「普通の布団では寒くて眠れない」「人肌が恋しいから“肉布団”はどうか」と家来に提案。すると家来は水着姿を着た8人の女性を呼び、まず、敷布団として呼ばれた4人が仰向けで布団の上に寝そべり、その上に志村が横たわる。次いで掛け布団として呼ばれた4人が志村の上にうつ伏せで乗るという演出であった。

 この“肉布団コント”は女性の身体を“肉”と表現し、布団という物として扱っている。こうした女性蔑視的な演出に、一部の視聴者からは「全然笑えない」「気持ち悪すぎる」といった批判的な意見が出ている。

志村けんには“セクハラ”や“女性蔑視”といった感覚がない?
 『バカ殿様』は、1986年から現在に至るまで不定期に放送されている長寿番組であり、志村けん本人も台本作りに参加しているようだ。志村演じるバカ殿様は若い女性が大好きであり、出演者の女性とのハグや添い寝といった演出が定番となっている。なお、女性が胸を露にした姿で出演していた時代もあったが、現在はさすがに水着や服を着用している。

 長年、下ネタ満載の『バカ殿様』を続けてきた志村だが、最近では彼自身の“セクハラ”や“パワハラ”が話題になることもあった。

 2017年10月に放送された『ワイドナショー』(フジテレビ系)で「芸能界におけるセクハラ問題」が取り上げられると、「よく女の子の尻を触る人」として志村の名前が挙がった。番組によると志村は「カメラが回っていない時間に共演者の女性の尻をよく触っている」という。

 その際、東野幸治が志村の件をフォローするように「女の子に気安い雰囲気をつくってあげている」と意図を紹介したが、ヒロミや松本人志は「いやいや、それはもう通用しない!」と否定。ヒロミ、松本の言うとおり、それはセクハラをする側の勝手な解釈だろう。

 また志村は、優香などお気に入りの女性タレントを自身の冠番組に出演させ寵愛するとも言われてきた。昨年9月に『バカ殿様』や『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)に出演し、一部では志村の愛人疑惑も出ていたグラビアタレントの小林恵美が芸能界引退を発表した際には、「志村けんの機嫌を損ねて芸能界を干されたのでは」という憶測も飛び交った。

 傍から見れば、志村の行動は“ハラスメント”。しかし現在68歳で、昭和の芸能界でスターだった志村は、その感覚を持ち合わせていないのかもしれない。相手の許可なく一方的に体を触ることも、歪んだパワーバランスも、至極当然のことだと認識している可能性がある。

 今回の「肉布団コント」に関しても、それが“ちょっとエッチで面白い”“笑える”と捉え、企画しているのだろう。

 そんな『バカ殿様』を時代錯誤だと非難する声がある一方、視聴者からは「今の時代にしては攻めていてよい」「バカ殿はそのままでいて欲しい」など、好意的な意見も見られる。あくまでテレビバラエティの演出なのだから、カタいことを言うな……というわけだ。

「今のテレビはつまらない」と昔のテレビを懐かしむ人々
 今月6日放送の『ワイドナショー』では「2019年、どうなる?TV番組」をテーマにして、議論が交わされた。その際、松本人志は以下の発言をしている。

<スピード違反を起こさないような番組ばっかりで。制限速度60kmっていわれてるのに、もう50(km)も出さないですもんね!30、40 kmしか出さない番組で>
<主導権を視聴者からTV局が取り戻すことが大事>

 この意見に賛同した人からは、「昔のテレビは面白かった」「今は視聴者を気にしすぎている」など、昔を懐かしむ意見も出ている。

 たしかにネットが発展した今、テレビ番組は些細な視聴者の苦情がSNSに書き込まれただけでも“炎上”と報道され、過敏になりすぎているところもあるかもしれない。しかし、だからといって、性差別や暴力、人種差別等が横行し、「ハラスメント」という言葉すらなかった昭和~平成初期に回帰することはできない。

 再びテレビでそうした演出を垂れ流しにしたところで、果たして私たちは「面白い」と盛り上がるのだろうか? そもそも、過去の時代であっても、そういった番組の裏には必ず、理不尽な“我慢”を強いられていた人がいたはずだ。

 テレビ業界がすべきは過去を美化して今を嘆くことでも、過剰に萎縮することでもなく、ハラスメントによる笑いに頼らない“面白い番組”づくりだろう。

最終更新:2019/01/11 20:10
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