性犯罪被害に遭った後も生活は続く。被害者への経済的支援とその課題

 今月19日、名古屋市議会で性犯罪を含む犯罪の被害者や遺族に支援金を給付することを定めた「犯罪被害者等支援条例」が可決された。4月1日より施行。まだ条例の詳細は不明だが、日本経済新聞では「日常生活が困難になった被害者に一定期間、自宅に食事を配達したり、犯罪被害者の遺族が約定通りに損害賠償金を受け取れない場合に、150万円を上限に見舞金を支給したりする支援策なども盛り込んだ」と報道されている。

 また共同通信社の報道によれば、「預貯金額が200万円未満であることなど一定の条件」があり「死亡した場合は30万円、重傷を負ったり、強制性交の被害を受けたりした場合は10万円が支給される」。犯罪被害者や遺族に支援金を給付する条例は他の市区町村などでも存在するが、性犯罪の被害者も支給対象となるのは政令指定都市で初めてとのことだ。

 性犯罪の被害者は被害に遭った後PTSDなどの精神疾患を発症することもあり、心身ともにダメージを負うことが少なくない。

 警察庁が平成26年に行った過去10年間に性犯罪(未遂を含む強かん・強制わいせつ、痴漢等の条例違反)の被害に遭った人と家族・遺族を対象にした調査によると、被害に遭った本人が日常生活が行えなかったと感じた日数の平均は68.2日だった。

 また、被害後の生活上の変化についても「学校または仕事を辞めた・変えた」のが39.9%、「学校または仕事をしばらく休んだ」のが47.3%という調査結果も出ている。ここには被害者の家族も含まれている。「日常生活が行えなかった」と感じる日数は、被害者本人に比べて家族・遺族のほうが少ないことも考えると、対象を被害に遭った本人だけに絞った場合この数値はもう少し高くなるのではないだろうか。

 内閣府の平成26年度の調査によると、異性から無理やり性交された人のうち家族や親戚に相談した人の割合は5.1%だった。心身のダメージにより働けなくなり、親など経済的な支援をしてくれる人にも頼れない場合、生活に困窮してしまうこともあるだろう。被害届を出せなかった人もいるだろう。

 名古屋市では今回の条例を検討するにあたり「申請主義ではなく、支援者側から被害者へ働きかける仕組みだとよいと思う」「被害を受けたが警察に届けていない場合について、支援の対象とするか議論が必要だと思う」といった問題提起が行われていた様子が伺える(第2回「名古屋市犯罪被害者等支援条例(仮称)」検討懇談会 会議概要)。こうした意見が条例に何らかのかたちで反映されていることを期待したい。

 名古屋市の条例はあくまで条例であり法律ではない。では、国はどのような経済的支援を用意しているのだろうか。

 警視庁のHP内の『性犯罪被害にあったら!』というページには、警察における被害者支援の制度として

・犯罪被害給付制度
・犯罪被害者に対する公費支出制度

の2つがあげられている。

 犯罪被害給付制度とは、犯罪被害者の遺族や重傷病もしくは後遺症などの障害が残った被害者に国が給付金を支給する制度のことだ。犯罪被害給付制度には遺族給付金、重傷病給付金、障害給付金がの3種類がある。この中で被害により身体への障害が残らなかった性暴力の被害者本人が受け取る可能性があるのは重傷病給付金だ。

 重傷病給付金とは、犯罪の被害により重傷病を負った場合に受け取れる給付金のこと。支給対象者の条件は以下の通り。

「犯罪行為によって、重傷病(療養期間が1か月以上で、かつ、入院3日以上を要する負傷又は疾病。PTSD等の精神疾患である場合には、療養期間が1か月以上で、かつ、その症状の程度が3日以上労務に服することができない程度であることを要する。)を負った犯罪被害者本人」

 支給の可否は、申請後、都道府県の公安委員会が、診断書など医師の診断結果や聞き取りに基づいて判断する。支給が決定した場合、負傷又は疾病にかかった日から1年間における保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額を合算した額(上限額:120万円)が給付される。

 もうひとつの犯罪被害者に対する公費支出制度とは、被害者が病院で受診した際に要した診断書料や診察料等の全額または一部を、公費で支出する制度だ。

 性犯罪における公費の対象項目は以下の通り。

・診断書料(犯罪の捜査又は立証のため必要とする場合)
・診察料
・緊急避妊薬費用
・性感染症検査費用
・人工妊娠中絶費用
・カウンセリング費用

 しかし、これらの制度には課題もある。被害者が申請しなければ、支援が受けられないのだ。また、重傷病給付金は申請から実際の給付まで半年ほどかかる。名古屋市で可決された「犯罪被害者等支援条例」は、給付金を受け取るまでのつなぎのためという意味合いもあるようだ。しかし、性犯罪の被害者に支給されるのは10万円とのこと。これだけでは半年間のつなぎにはならないだろう。

 これらの問題を解決しようと、厚生労働省は「被害回復のための休暇制度」の導入を啓発していこうとしているようだ。被害回復のための休暇制度とは、被害に遭った後しばらく休養をとったり、警察や裁判にいくために取得できる有給休暇のことだ。導入の方法は、「犯罪被害者等休暇制度」として新たに専用の休暇制度を設けたり、休暇制度として新たに設けなくても、休暇を取ることが可能だということを周知するやり方などがある。

 しかし、平成28年度に同制度の導入につきアンケートを実施したところ、企業、労働者とも9割以上が、同制度を導入すべきという意見があることを知らないという状況であったとのこと。今後、普及をさせていくのはもちろんのこと、同時に、被害に遭った方は会社へ事情を説明したくないこともあると思われるので、どのような形で導入するのが被害者にとって最善であるか、最大で何日間休めるようにするのかなど議論と改善が必要だろう。

 こうした支援はまだまだ不十分なのが現状だ。また支援内容や申請の方法などが分かりやすくまとめられておらず、知識としてあまり普及していない。被害に遭い、日常生活に支障が生じている人が、制度を十分に理解し、申請書を自ら用意するといった余裕があるようには思えない。被害に遭った人への負担ができる限り少ない形で支援を受けられる体制作りが必要だ。申請しなくとも支援が受けられるなど、被害者に寄り添った支援の形にしてほしい。性犯罪に遭ってしまったときに、どこから、どんなサポートが受けられるのかについては知らない人がほとんどではないだろうか。支援を充分なものに改善していくことはもちろんだが、その知識を分かりやすい形で普及させることもまた急務である。
(もにか)

最終更新:2018/03/28 20:00

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