[官能小説レビュー]

セックスを仕事にする女が「かわいそうな女」とは限らない――風俗嬢と教師の価値観のズレ

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『恋塚』(講談社文庫)

 男性に多く存在するように、女性にも「セックスが好き」という人はいる。誰とでも寝てみたり、自分の性欲を満たすためだけに風俗店に勤めたり、アダルトビデオに出演したりする女性は、決して都市伝説ではなく、実際に存在するのだ。しかし、アダルトビデオに出演したり、風俗店に勤めているだけで、世間からは「かわいそうな女」だと思われがちである。

 今回ご紹介する『恋塚』(講談社文庫)収録の「鳴神」に登場する妙子がそうだ。主人公である教師の和樹は、かつての教え子たちが集う同窓会で、妙子が風俗店で働いているといううわさを聞いた。決して目立つ存在ではなかったが真面目な生徒であった妙子は、和樹が勤める高校を卒業してから家庭環境が悪くなり、結果、悪い男に捕まって借金を背負ってしまったという。

 10年前に妻をがんで亡くしてからずっと独り身である和樹は、ひとりで自宅にいることが耐えられずに、隙間の時間を埋めるようにボランティア活動に精を出していた。10年もの間、人のために尽くしてきた和樹は、男の借金のために風俗で働く妙子の力になりたいと考え、彼女が働く風俗店へ会いに行く。

 和樹の想像とは裏腹に、妙子は風俗の仕事を「楽しんでいる」と言った。また、風俗で働く自分のことを「かわいそう」と言うことで、クラスメイトたちは優越に浸っているのだと。

 連絡先を交換した2人は、後日カラオケボックスなどで話をする。しかし、和樹がどれだけ思いをぶつけても、妙子はまったく風俗をやめようとしない。そんなある日、妙子は和樹の家に遊びに行きたいと言い出す。昔の教え子ということから、軽い気持ちで妙子を家に上げた和樹だが、その夜、妙子は思わぬ行動に出る――。

 女子校のクラスメイトたちが妙子のことを「かわいそう」だと話していたが、妙子はそんな彼女たちの方こそ「かわいそう」だと言う。人にはさまざまな生き方があり、悩みがあり、価値観がある。その中でレッテルを貼りやすいのが「風俗で働く」ということだ。誰にでも身を売る女性は自分の価値を下げているから「かわいそう」だと言いやすい。しかし、風俗で働く女性全員をひとくくりにはできない。妙子のように、男に抱かれることが好きで好きでしょうがない女性も絶対数で存在しているのだ。

 正義感を振りかざす和樹を蔑むように、彼の上で微笑む妙子のラストシーンは、読んでいて実に爽快である。セックスの価値観は人それぞれであり、誰も型にはめることはできない。
(いしいのりえ)

最終更新:2018/03/16 17:13
恋塚 (講談社文庫)
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