[官能小説レビュー]

40代女性にとって厄介なセックス——「サービスタイム」が教える、衰えた体を愛する意味

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『MILK』(文藝春秋)

 年齢を重ねた女にとって、セックスは媚薬にも麻薬にもなりうる。性欲がピークに達している20代から30代までに比べると、40代を過ぎた女性は、ある程度セックスに対して「諦める」ことができる。

 夫から求められなくなったとしても、結婚生活が長く「家族」となった今では、逆にセックスレス夫婦の方が2人の関係を維持しやすかったりする場合もある。また、求められなくなった自分を振り返り、若い頃に比べて格段に衰えたスタイルを目の当たりにすると、男の前で裸になるという緊張感や「女でいるためのセックス」から解放されることに安堵感を覚える女性も多いだろう。

 その反面、たまに訪れる「ご褒美セックス」が極上に気持ちいいから厄介である。その相手はパートナーであったり、また別であったりと、さまざまではあるのだが。

 今回ご紹介する『MILK』(文藝春秋)は、石田衣良氏が書き溜めた短編官能小説を1冊にまとめたものである。10編からなる、さまざまなカップルの官能的な物語の中で、最も注目したいのが「サービスタイム」だ。

 本作は、とあるハタチの大学生の視点で描かれている。大学生の谷澤浩介は、セックスに対してあまり素敵な思い出がない。これまで経験した2人は、それぞれ飲み会の流れでホテルへ行った同世代の女性。憧れを抱いていたセックスはどちらも白けたものであり、浩介は落胆したことだけを覚えている。

 彼が気になっているのは、アルバイト先のスーパーで働くパートの智香子だ。うわさではアラフォーであるという智香子は、年齢が示すようにぽっちゃりとした体形で、これまで飲み会で出会った同世代の女たちのように華奢ではない。しかし、ふっくらとしている割にはキュッと引き締まったウエストや足首と、すべすべと柔らかそうな白い肌は、浩介の目を惹きつけるものであった。夜な夜な智香子を「オカズ」にし、妄想に耽る日々を繰り返していた。

 ある日、アルバイトを終えた浩介は、通用口でパート明けの智香子とばったり遭遇する。予想外の雨が手伝って、2人はぴったりと身を寄せ合って1つの傘に入って帰った。

 会話を弾ませながら最寄駅まで歩き、浩介は彼女をお茶に誘う。知香子の目尻に寄った魅力的なシワに釘付けになっていると、彼女は「あそこへ行ってみる?」と、喫茶店ではなく、別の建物を指差す……信号の向こうに見えるのは、きらびやかなネオンを放つラブホテルであった。小刻みに震える智香子の手を取り、浩介は彼女とホテルの扉を開けるのだが——。

 ホテルに入った後のセックス描写は、同世代の女性であれば誰しも智香子に共感をし、浩介に対して称賛を浴びせるだろう。年齢を重ねてシャープではなくなってしまった体を愛おしく感じてくれて、肌のぬくもりを愛してくれて、妊娠や出産を経験した逞しい自分の体を「気持ちいい」と言ってくれる。どんな関係であれ、たった1人の男に自分の人生を肯定してもらえただけで、女はまた明日から元気に過ごすことができるのではないだろうか。

 だから、40を過ぎたセックスは厄介である。セックスへの欲求は、定期的に解消するものではない。これからの長い人生のうちに一度でもいいから、智香子のような「サービスタイム」が得られれば、その喜びを糧にしばらくは前を向いていけるものなのだ。
(いしいのりえ)

人は誰だって年を取るもの

しぃちゃん

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