[官能小説レビュー]

愛する人にセックスだけ受け入れてもらえない――至福の行為を奪われた40代女性の苦悩

hanaguruma
甘いお菓子は食べません』(新潮社)

 女の40代というのは本当に生きづらい年代だと実感している。自分が本格的にババアに片足を突っ込んでいることには自覚をしているけれど、まだ心まで老けたくない自分がいるのだ。

 身体的には確実に老いている。体のラインは20代の頃とは比べものにならないほど醜くたるみ、体重もなかなか減らなくなった。もちろん40代で、美しさを保っている女性も少なくない。しかし、多くのアラフォー世代は、若い頃よりも自分を甘やかすことを優先してしまい、結果として女としての商品価値を落としている。

 女としては完全引退の印籠を渡される年齢である。しかし、心の奥底では「まだ、私だって」と、キラキラと輝いた女の時代を捨てきれないのだ。その最たる例がセックスである。無条件にひとりの男に没頭され、愛されるという、女に生まれてきた喜びを感じられる行為。あの至福の行為を奪われてしまったら、どうなってしまうだろう?

 今回ご紹介をする「花車」は、R-18文学賞で大賞を受賞した田中兆子による初の単行本『甘いお菓子は食べません』(新潮社)に収録されている。

 物語の主人公は、40代の既婚女性の武子。ビーズアクセサリーの講師を務める彼女には、本業は日本画家であるが、ほとんど主夫と化している夫の宗一郎がいる。2人の子どもにも恵まれ、仕事も好調で順風満帆のはずであったが、ある日武子は宗一郎に「僕はもうセックスをしたくない」と告げられる。

 武子は産後15キロ太ってしまった。そのことでセックスから遠ざかっているのだと感じた彼女は、懸命にダイエットに励んだ。しかし宗一郎は、外見が変わっても相変わらず彼女に愛情はあるという。単純に性欲が薄れただけなのだ。

 もともとセックスが好きではなかった彼は、武子とのセックスを「おつとめ」と揶揄し、引退をしたいと宣言する。夫が我慢してセックスをしていたことを知った武子はショックを受け、友人から教えられた「セックススタイリスト」を紹介してもらう。セックススタイリストとは、セックスをしたい男女をマッチングする人物のこと。武子の友人はそのシステムを定期的に利用し、ストレス発散をしているのだ。

 好きな人と、宗一郎とセックスがしたい――しかし体は疼く。武子はセックススタイリストに紹介された男性に会うためにドレスアップをして向かうのだが――。

 作中では、年齢と性欲をこじらせている40代の武子が生々しく描かれている。セックスという行為以外はすべて夫に受け入れられ、心から愛されているからこそ、年を重ねた性欲は厄介だ。年を重ねるたびにセックスの回数よりも、その質に価値を見出すようになる。それは、老いてきたからこそ、「こんなに愛されている」と体で受け止める行為こそが喜びにつながるからである。

 あなたとセックスがしたい――武子の宗一郎に対する悲痛なセリフは、年輪を重ねた女性に強く響くだろう。
(いしいのりえ)

人は平等に年を取るはずなのに

しぃちゃん

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